第12章 時を越えて〜舞の秘密〜
「…そう。」
「はい。それに、今俺が舞さんと一緒に戻ったとしても、舞さんはもう俺と結婚することはないと思います。」
そう言って、佐助が舞を見る。
「そうだね。佐助くんの言う通り、元の時代に戻ったら、徳川のおじさまにお断りしに行こうと思ってた。あの頃は寂しくて流されるまま、受け入れようとしたけど、今はもう寂しくないから。この時代で過ごして傷が癒されたの。だから今は、結婚するなら好きな人としたいって思ってる。例え一生ひとりだったとしても、それでもいいって思うよ。」
「……」
家康はもう何も言わなかった。
「もし、帰る前にこの時代で好きな男ができたらどうするつもりなんだ?」
今度は政宗が聞いて来た。
「……それでも帰る。」
「なんでだ?好きなヤツができたら残れば良いだろ?」
「理由はこのあと話すけど、好きになったからって報われるとは思わないし、もし報われたとしても、この時代の人は無理。」
「無理?って言い切りかよ。」
「うん。」
「何が無理なんだ?」
秀吉が割って入って来た。
「だって…好きになって恋仲になったら、その人のお嫁さんになりたいって思うでしょ?」
「普通はそうだな。」
「だから、無理なの。この時代の人たちは、奥さんがたくさんいるでしょ?そんなの耐えられない!」
「好きな男が自分以外を娶るのが嫌ってことか?」
「そう!私の時代は奥さんは一人。それが当たり前で生きて来たから、何人も奥さんがいるとか、絶対に無理!!」
「…それはーー」
「史実だと、家康なんて…」
「はっ?俺?俺がなに?」
「家康なんて…奥さんが20人以上もいるんだよ!子は30人以上!!それ以外の人たちも少なくとも3人くらいは奥さんがいて、子どもが10人以上いる。だから嫌なの!!」
家康「………」
信長「くっ、家康、貴様意外にやるな。」
幸村「ぶっ!嫁が20人て…すげーな。」
政宗「くくっ、一番あり得なさそうなヤツなのにな。」
信玄「俺でも20人は厳しいなあ。」
三成「さすが家康様!」
秀吉「家康がなぁ。大したもんだ。」
謙信「…ふっ、人は見かけによらぬな。」
佐助「家康公、石になっちゃいましたね?」
三太郎「……」
それからしばらく、家康は石になったまま動かなかったという。
そんな家康に舞は
「余計なこと言ってごめんね。本当にごめんね。」
と何度も謝った。