第12章 時を越えて〜舞の秘密〜
ーーーその日、酉の刻。
広間には武将たちと舞、そして三太郎がいた。
半刻ほど前に安土から秀吉と政宗もやって来た。
「光秀は例のごとく行方不明だ。」
と秀吉が苦笑いする。
「うん。光秀さんらしいね。」
舞はそう返すと、二人の後ろにいる人物に気付く。
「三太郎さん!」
三太郎を見て、抱きつかんばかりに喜ぶ舞。
「舞様、お体の具合はいかがですか?」
「はい!もうすっかり元気です。三太郎さんに会えたからもっと元気になりました!」
「ははっ、それは何より。」
そんな会話をしながら二人は歩いて行ってしまう。
そんな二人に、目を丸くする秀吉と政宗。
「三太郎殿が笑うところなんて初めて見た。」
「ああ。」
三太郎は秀吉より早くから信長に仕えている。出会ってから長いが、三太郎の笑顔など見たことはない。いつも鋭い空気を身にまとい、信長に対してでもそれを崩すことのない三太郎の初めて見る姿だった。
「舞はやっぱり舞だな。」
そうポツリと言った政宗の言葉に秀吉は深く肯き
(あの三太郎殿の心も解かすとは…。やっぱり舞は織田軍にとってかけがえのない存在だな。)
と心の中で呟いた。
広間に移った舞と三太郎。
他の武将たちへの挨拶を終えた三太郎が
「舞様、これを。」
と舞に風呂敷包みを差し出す。
「私にですか?」
「はい。どうぞ開いてみてください。」
促され、包みを開いてみれば、出て来たのは
「忍びの?」
そう、忍びの装束だった。不思議そうにする舞に
「先日お召しになっていたのは三ツ者の装束でした。」
「えっ?」
「舞様は織田軍の姫であるので、饗談の装束を身に着けるのが筋。」
「はっ?はあ…」
「ですので、饗談のくノ一装束をご用意いたしました。帰路の旅ではこちらを。」
「………」
三太郎の言葉に呆気に取られる舞。
「「「「ブッ!!!」」」」
何事かと見守っていた武将たちは、そのやり取りに吹き出した。
政宗「舞、良かったな。」
秀吉「三太郎殿はこのために来たのか?」
家康「アーハッハッハッ(笑い過ぎてお腹痛い)」
三成「舞様が身に着けられたところを早く見たいです!」
信玄「…(苦笑い)」
信長「…(ニヤリ)」
謙信「…(軒猿のも作る!)」
義元「謙信は軒猿のも作るつもりじゃない?」
幸村「ああ。間違いないな。」
佐助「…(軒猿姿の舞さん♡)」
重苦しかった空気が和んだ。