第12章 時を越えて〜舞の秘密〜
眠った舞を女中に預け、広間へと移動する。
それぞれ思うこと、言いたいことはあったが、それをグッと堪えて政務に集中した。
家康は定期的に、舞の診察に行く。
あの高熱が嘘のように、熱は下がり食欲も出て、舞は日に日に回復していった。
「家康、いつもありがとう。」
「あんたの『ありがとう』は何度も聞いたから、『もう言わなくっていい。』って何度も言ってるでしょ。」
「知ってるよ。でも、何度も言いたいの。」
「もう!って…ぷっ、俺たち何度このやり取りしてるんだろうね。」
「ぷっ、本当だね。今日も家康が笑ってくれて嬉しい。」
ポソッ
「…あんたが元気になればもっと笑う。」
「えっ?何か言った?」
「なんでもない。薬飲んで。」
「えー、苦いからやだ!」
「わがまま言わないの。ちゃんと飲んだら、りんごあげるから。」
「…ううっ。じゃあ、頑張る。」
そうして数日が過ぎた頃、舞はすっかり元気を取り戻し、日常生活を送れるようになった。
ある日の朝餉が終わった後、
「今晩、話を聞いてください。」
皆に一言そう告げた。
その日の昼間は、義元と春日山に戻った幸村と三人で城下町へと出掛けた。
「この間のやり直しだね。」
そう言って微笑む義元が舞と手を繋ぐのを見て
「義元、なにやってんだよ!」
と幸村が文句を言う。
「はぐれたら困るからね。」
悪びれもせずに言う義元。その様子を見ていた舞が
「じゃあ、こっちは幸村と繋ぐ。」
と幸村の手を取った。驚いた幸村だったが、舞の顔がとても嬉しそうだったので、そのままその手を握って歩く。
美丈夫2人が美女を真ん中に、手を繋いで歩く姿はかなり注目の的だったが、舞も義元も気付いてないのか気にしていないのか、そのまま進むので幸村も気付かないフリをした。
3人で店を回り買い物をして、茶屋で休憩する。他愛ない時間が、とても楽しかった。3人でたくさん話し、たくさん笑った。
そうして仲良く手を繋いで帰って来た3人を見て、城の人々は微笑んだ。
「お土産です!」
と言って嬉しそうに城の者にお団子を配って歩く舞を見て、武将たちが笑う。
信長「彼奴は一体、いくつ団子を買ったんだ?」
三成「甘味屋を3軒回って買って来たそうですよ。」
家康「はぁ…どれだけ小遣いやったんだか。」
「お土産買って来ましたよー!」
そこには山盛りの団子。
皆、大笑いした。