第10章 夏合宿後半戦
なんやかんや言われながら。
黒尾くんの挑発もありながら...。
月島くんも参加してのスパイク練習。
木兎くんはやっぱり凄い。
うちの虎くんとか、あと合同練習に来て色んな学校のエースを見て、みんな凄いなって思うけど。
木兎くんは別格だ。
超インナーとか、際際のラインショットとか。
音も全然違う。ドゴオッて感じの、力強い音。
だから、月島くんの腕が折れそうで心配...。
「2枚ならどーだ? 」
ボールをあげる手伝いをしながらスパイク練を眺めていた私は、その声でふと黒尾くんを目に入れる。
...リエーフくんは大丈夫かな。
黒尾くんが加勢したブロックは、木兎くんのスパイクを簡単に止めてみせて。
経験年数の差は当然あるだろうけど、それだけじゃない。
技術面の差だけじゃなくて、精神面の差?とでもいうのかな。
だって、黒尾くんのブロックって、圧が強い。
執念深いっていうか、絶対止めるっていう圧。
私はバレーボールなんてやったことないけど、素人目にも、あの前に立つのは怖いだろうなと思ってしまう。
まあ、そんなこんなで。
月島くんの負けず嫌いな一面も見つつ。
黒尾くんが月島くんを挑発して。
月島くんがムキになって...
「それはしょうがないんじゃないですか。」
あれ?
ムキにならなかった。
絶対突っかかってくると思ったのに。
黒尾くんの言葉に、月島くんの雰囲気が変わる。
そのあとすぐに犬岡くんたちが来て、月島くんの会話はうやむやになって。
「おっこらしたー。」なんて、木兎くんが黒尾くんを少しからかっているのは聞こえたけど。
なんとなく、月島くんのことが気になる練習は、ご飯の時間を機に幕を閉じた。