第10章 夏合宿後半戦
第3体育館に入れば、ミミズクヘッドの木兎くん。
そして、梟谷のセッター...
『あ、赤葦くん。』
「はい、赤葦です。」
赤葦くん、相変わらず一見クールだな。
「お久しぶりです。」
『久しぶりー。』
「今回もサポート、ありがとうございます。」
律儀にぺこりと頭を下げてくれる赤葦くん。
やっぱりいい子だ。
「よっしゃーやるぞー! 舞衣ー! ボールだして! 」
呼び捨て!!
高校生の男の子が女の子の名前呼び捨てって、ハードル高くないの?
あ、研磨くんはするか...。
あと木兎くん、私の名前知ってたんだ。
ほとんど話してないのに。
少し驚きつつ。
名前呼び、ちょっと嬉しいよね。
私は、『はあい』なんて気にかけてないフリして、コートに入る。
『いきまーすっ』
ポーンと、山なりに投げたボール。
あ、やっくんのレシーブ、いつもこんなだよね。
セッターの赤葦くんは、ボールの落下点にスっと入って、ボールをふっと上にあげる。
丁寧なオーバーハンドパス。
そこに跳ぶ大きくな身体。
一瞬で掌がボールを捉え、それと同時に反対のコートから手がにゅっとボールに覆い被さる。
バシっと力強い音を立てて、ボールは地面へトンと落ちる。
『黒尾くんナイスワンチー』
「へっへー! 」
「ちっくしょー! もっかい! 」
「舞衣さん、ボールお願いします。」
『はーいっ。いきまーす』
山なりのボール。
また丁寧なオーバーパス。
そこに重なる大きな手。
黒尾くんの腕をの横を通る、キレキレのクロス。
バァン!!と、さっきと比べ物にならないくらいのボールの音が響く。
『ナイスキー! 』
「チッ」
「よおっしゃー! ヘイヘイヘーイ!」
『すごいクロスだね! 』
素人目にもわかる。
あんなインナー、なかなか見たことない。
流石は全国。しかも5本指エース。
「だろー!? わかってんなぁ、舞衣! あかぁーし、もういっぽーん! 」
「舞衣さん、お願いします。」
『はーいっ。いきまーすっ』
ボールをポンと、赤葦くんの頭上に投げて。
その度生じるスパイクとブロックの攻防に、『ナイスキー』と『ナイスワンチー』と、たまに『ナイスブロックー』の声掛けを繰り返して。
ボールかごの中のボールがなくなって。拾い集めるところで、