第10章 夏合宿後半戦
「倉尾さーん、次どこっスか? 」
『次は生川とだよー。今3セット目の中盤だから、もう少しだね。』
合宿後半戦。
質問に来てくれた犬岡くんと話をしていると、
「舞衣さん! ドリンクどこですかー! 」
『あぁ、ごめんね! その体育館の上にあるピンクの籠が音駒のだよ! 』
「りょーかいっす! 」
リエーフくんに声をかけられ、
「倉尾ー、テープどこ? 」
『え、ベンチの上なかった? 』
「無ぇよ。」
「あー、じゃあマネバの中だわ。今出すね。」
やっくんにテーピング用のテープを渡す。
合宿後半戦は、初日から大人気。マネージャーとして。
本当は選手に声をかけられる前に渡せるのが1番いい。
言われる前に、先回りしてやっておくべきなんだけど。
潔ちゃんとか、先回りするの凄く上手なんだよなぁ...。
みんなが他の学校のプレーを見て学んでいるように、私も他校のマネージャーの様子を見て学びながら、出来ることとをやる。
テスト期間で動かないと、少し身体が訛った気がする。
やらないと下手になるのは、運動も勉強もマネージャーの仕事も、なんだって変わらないみたいだ。
感覚を思い出しながら、あっちに呼ばれてこっちに呼ばれて。
次の準備をしながら、今の様子を気にかけて。
烏野は、今日も元気にペナルティの坂道ダッシュをしている。
外は今日も暑い。
いくら涼しい森然だって、いくら窓を開けていたって、夏は夏。
暑いものは暑い。
特によく騒いでよく動いてる虎くんやリエーフくん、犬岡くんの熱中症に注意しながら、あっという間に過ぎる時間の中でマネージャー業をなんとかこなす。
後半戦ともなれば、少しずつ他校の人も覚えてくる。
特に烏野は、もうほぼ覚えたんじゃないのかな?
烏野主将の澤村くん。
意外と元気なスガちゃん。
潔ちゃん曰く、メンタル弱い東峰くん。
坊主頭で虎くんと仲の良い田中くん。
やっくんが凄いって言うリベロの西谷くん。
正に名前通りに縁の下の力持ち、縁下くん。
ジャンフロサーブの木下くん。
仕事きっちりの成田くん。
ツッキーだいすき山口くん。
長身メガネの月島くん。
変人コンビの日向くんと影山くん。
の、片割れ。
『...影山...くん? 』