第8章 ガールズトーク イントゥーザナイト
なんで!!
何が違うの!?
私には感じえない何かをみんなは感じ取ってるの!?
「あはは、ごめんごめん。」
かおりちゃんは笑いながら私に言う。
「なんか、そういう話をすると妙に必死になるからさ。舞衣ちゃんが。」
『え、そう!? 』
「そうだよー、なんかやたらうろたえてるよね。」
「うん〜、なんでもないなら、テキトーにかわせばいいのにね〜。」
「だから、好きなら合宿中に協力できないかなーって思っちゃったんだよねー。折角の合宿だし? せっかく会えた仲だし? 」
「お似合いだしね〜」
「おせっかいでごめんねー! 」
「ごめんね〜」
『え! いやいや、そう考えてくれてたのは嬉しい...けど...。』
「でもさあ、好きなのを気付いていないなら、勿体無いとも思うんだよ。」
『え? 』
少し真面目なトーンになって、かおりちゃんは続ける。
「うちらもう、今年が最後だからさ。」
ストン。って。
言葉が体の真ん中を落ちた感覚。
「後悔ないように、したいじゃん。勿論部活もね。」
今年が最後。
私にとっては最初で最後の合宿。
最初で最後のマネージャー。
「おーい、もうすぐ集合だから、食べてるやつ早くなー。」
生川高校の主将が食堂に向かって声をかけたのをきっかけに、私達も食べるペースが上がる。
私達は、いつの間にか高校3年生になってしまった。
滑り込みのマネージャー。
バレー部のみんな。
他校の人達。
新しい友達。
当たり前に続くように見える学生生活は、秋が来れば残りは半年になる。
気温が上がるにつれて、熱が入る練習。
犬岡くんのテーピングをやり直して、みんなの様子を記録して。
ドリンクの用意やローテーションの把握。
バレーボールが叩きつけられる音。
シューズの音。
みんなの声。監督たちの声。
体育館に響き渡るくらいの音ともに上がるやっくんのレシーブ。
相手チームの驚いた表情。
研磨くんに上がる綺麗な放物線上のパス。
黒尾くんの汗がいっぱいの横顔。
体育館という箱の中で、今が全てのような一瞬。
今年が最後なんだ。
黒尾くんをよく目で追ってしまうのは、多分1年生の頃からの癖なんだ。