第6章 夏合宿やるってよ
ある昼休み。
『合宿、ですか。』
「おう。梟谷グループで、毎年やってんだ。これ、あいつらに配っといてくれ。」
猫又先生に呼ばれて渡されたのは、合宿についてのお知らせが書かれた簡易的なプリント。
音駒高校、梟谷学園高校、生川高校、森然高校。
梟谷グループの4校は、時折交流がある。
交流の仕方は、部活の合同練習から行事の合同実施まで様々。
「今年もかー。」
バレー部の合同長期合宿も、恒例行事のようだった。
昼休みの終わり際の教室で、猫又先生からの伝言を一足先に主将へ報告する。
黒尾くんは合宿のお知らせに目を通しながら、何やら複雑そうな顔をする。
『こんなのやってたんだね。知らなかった。』
「まあ当事者じゃなきゃ知らないわな。」
『毎年この4校なの? 』
「んー、そうだな。確かに色んな学校と練習出来んのはいいことなんだけど...3年目にもなると、若干代わり映え無い気もしてくんなあ。」
『あ、そういえば。』
猫又先生に言われた大切なことを。もう1つ。
『烏野も来るよ? 』
「えっ、マジで? 」
『うん。なんかテストあるらしくて、来れるかまだわからないらしいけど。』
「ふーん? 」
パッと、表情が変わる。
分かりやすい。
『うん。潔ちゃんにさっきメッセージ送ったら、そう言ってた。』
「マジかよ? 」
『うん。』
「倉尾さ、大人しそうな顔して意外と誰とでも連むよな。なんつーの、コミュ力高い系? 」
『そんなことないよー。話しかけるのに抵抗がないだけ? かな? 』
「フーン。」
『黒尾くんの方がよっぽどコミュ力高い系男子でしょ。チャラ尾くん? だっけ? 』
「それやめてくれませんかぁー? 不本意デスー。」
わざとらしく口を尖らせる黒尾くんを、『ごめんごめん』と笑いながらあしらって。
『烏野が来るの、楽しみだね?』
なんて言えば、「んー。まあ。」なんて生返事をしながらも、どこかソワソワしている。