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黒尾くんと同級生ちゃん

第16章 春への1歩


『くぁ...』
「オイヨイ、寝不足ですか。」


大会の日の朝は、いつもより少し早い。
抑えきれなかった欠伸を、黒尾くんに見られてしまった。


『あ、ごめん。早く寝たんだけどなぁ? 』
「まぁ寝すぎて眠い時ってあるよな。」
『それかも。』


まだ暑い日もあるけれど、半袖1枚では肌寒い日も出てきて。夏服の上にカーディガンを着て過ごす日の方が増えてきた。

東京都代表決定戦の、1次予選。
ここを勝ち抜いて。11月の決勝戦で上位3校に入れれば、春高進出だ。


「ふは、そんな心配そうな顔しなくても。」
『え。』
「だーいじょーぶ。勝ちますヨ。」


ニヤリと少し意地悪そうに笑う黒尾くん。
その顔を見ると、なぜだか大丈夫な気がしてくるから不思議。


「おら、後輩集まってんぞ。まとめろよ主将。」
「だからなんで最近やっくんは俺に冷たいの? 」
「いつもどおりだろーが。」


黒尾くんの彼女いるのか騒動(?)で、やっくんに黒尾くんのことを好きだと知られて数週間。
やっくんに知られてしまったから、私はむしろ相談相手も増えたしどこか吹っ切れた気分なんだけど。

やっくんが気を回してか、私と黒尾くんが2人でいる時に話しかけてくることが多くなった。

やっくんの気を散らせてしまって、やっぱり少し申し訳なく思う。
そういうことを気にしないでバレーをしてて欲しかったから、言いたくなかったんだけど。

バレてしまった記憶は消せない。

ごめんねやっくん。

私はギャイギャイ言い合うやっくんと黒尾くんを横目に、バッグからトーナメント表を取り出して開いた。

マーカーでつけた印のおかげもあって、すぐに見つかる“音駒高校”の文字。
この小さな文字の中に、音駒も梟谷もいる。
あ、戸美学園もあった。


「...今年は組み合わせの運がいいね。」
『あ、研磨くん。』


私の肩口から覗き込んで、ポツリと言う研磨くん。
研磨くんは確かに人と関わるのが苦手みたいだけど、別に人と関わることが嫌いなわけじゃないみたいだ。
現に、翔陽くんとも仲良くしてるし、黒尾くんともずっと仲良し。
最近は私に話しかけてくれることも少しづつ増えた。
なんだか、野良猫が懐いてくれたみたいな嬉しさ。
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