第8章 魔王の告白
燃え盛る炎、
「ぐぁっ!」
断末魔の叫びと真っ赤な血しぶき.......
『空良、あなたは逃げて生き延びなさい』
あなたは、って何?
『嫌です。母上達と離れて生きて行くことなんて出来ません。お願いです。私も共にお連れ下さい』
死ぬか生きるかの選択は、急に目の前にやって来た。
『空良、必ず生きて、幸せになりなさい。人を愛し、愛される日がきっとあなたに訪れます。あなたを何よりも愛しみ、強く愛してくれる殿方の姿が私には見えるのです』
『嫌です。そんな、できません、母上達と離れて私が幸せになれるはず....』
覚悟を決めた表情の母上に、私はうろたえるばかりで何も出来なかった。
「待って、母上.........私を...置いていかないで......」
『大丈夫。父も母もいつでもあなたの心の中にいます。....さぁ、行くのです』
どうしてあの時、母上の言う事を聞いてしまったんだろう........
『嫌です!母上っ!待って、置いてかないで、私も連れてって』
侍女の手を振り払ってでも、その場で命を絶てば良かった。
「.........うっ、母上.....私も.. .....連れてって」
あの時の事を後悔しない日はなく、目を瞑れば必ずあの夜の夢を見てうなされた。
夢の中でどんなに手を伸ばしても、伸ばしても、母上の姿は遠くなっていく。連れて行って欲しいとどれほど願っても、母上は首を縦には振らない。
そして今夜も、伸ばした手が虚しく空を掴み落ち、その感触で目が覚めた。
「っ、............またあの夢........」
顕如様の所にいた時には毎晩見た夢。
ここ最近は見なくなっていたのに.......
ため息を吐き、額に手を当てると、
「凄い汗....」
夢にうなされたからか、気持ち悪いほどに寝巻きも濡れていて、しかも身体が少し怠い。