第45章 夢が見せる奇跡 〜年末年始特別編〜
大晦日、私は毎年のことながら、女中仲間の小夜ちゃんと城の広間の大掃除をしていた。
「空良、こっちはもう終わったよ。そっちはどう?」
「私もあとこの板の間だけで終わるよ」
「じゃあ待ってる間にお茶淹れるね」
「わぁ、ありがとうっ!」
小夜ちゃんがお茶受けの菓子を用意してお茶を淹れてくれている間に、私は気になっていた板の間の汚れをすっきり落とし、今年度の掃除は全て終了した。
「はぁ、今年も終わったねー」
小夜ちゃんは、お茶を飲みながら大きく息を吐いた。
「そうだね。今年も一年お世話になりました。来年もよろしくお願いします」
私もお茶を手に小夜ちゃんへ軽く頭を下げると、
「私こそ来年も宜しくね」
小夜ちゃんもぺこっと頭を下げて笑った。
「小夜ちゃんは、お正月の予定は?旦那様と二人で過ごすの?」
「ううん、今年は夫の義父と義母が明日から正月明けまで滞在することになってるの」
「そうなの?楽しくなりそうだね」
何も気にせず、そう、本当に何も考えずに小夜ちゃんにそう言うと…
「はぁ、いいよね、空良は気楽で…」
思いがけない言葉とため息が小夜ちゃんから帰って来た。
「え…、どう言う意味?」
「えー、だって、空良にはお姑さんやお舅さんがいないじゃない?だから気楽でいいなって…」
小夜ちゃんの言葉に、嫁の立場と言うものを瞬時に理解する。
「あ、あーそう言うこと?旦那様のお父様たちは怖いの?」
「んー、ちょっと怖くて細かいかな… 。あと、早く子どもを産めって言われてるからちょっとね…」
「そうなんだ……」
旦那様と祝言を上げて一年以上経つ小夜ちゃん夫婦にはまだ子供がいない。それが最近の小夜ちゃんの悩みで、それを言われるのはとても辛いのだと分かる。