第41章 叶えられていく思い 恋仲
恋仲最後の逢瀬を楽しんだ私たち親子は、手を繋ぎながら満たされ幸せな気持ちでお城へと戻った。
「……ヒッ!秀吉さんっ!?」
鬼、いや夜叉の様な形相(言い過ぎかも…)の秀吉さんが本丸に渡る廊下の前で仁王立ちしていた。
「信長様っ!やーーーっとお帰りでっ!」
「ん、秀吉、ご苦労であった」
ダラダラと、嫌な汗が背中を伝う私に反して、信長様は涼しい顔で秀吉さんに言う。
「なっ、何をしれっと!大変ご苦労でしたよっ!空良を探すのに一体何刻かかってると…!皆首を長くして信長様のお越しをお待ちしておりす。早くお支度をっ!」
信長様の周りを、信長様の衣装を手にした女中達が取り囲んだ。
明日は祝言、日ノ本全土から織田の関係者や大名達が集まっているのに、当主がいないなんておかしな話だ。
秀吉さんは逃す気はないとばかりに、信長様との距離を詰める。
「分かった分かった。そんなに叫ばずとも聞こえておる。だが汗をかいたゆえ湯浴みをしてくる、客人はもう暫く待たせておけ。空良、貴様も来い」
「えっ!」
秀吉さんの焦りと女中達が見えていないのか、信長様はしれっと湯浴みに行くと言う。
「はっ!湯浴みに?空良もって!戻らないつもりですかっ!?」
秀吉さんの叫びは痛いほど分かる。
このまま湯浴みに私を連れて行けば、信長様はまた暫くは戻られない。
ここに来て、私も一緒に湯浴みをすると言われるとは思っていなかった私も、内心驚いていた。
「煩い、心配せずとも戻る!あと少し、貴様と家康で相手をしておけ!織田のじじい共にもそう伝えろっ!行くぞ空良」
「えっ、あっ、」
「信長様っ!」
秀吉さんの叫びが二の丸に響き渡る。
吉法師を侍女に預けた信長様は、私の手を引き湯殿へと向かった。