第37章 母の思い
「ここは.......どこ?」
目を覚ますと、またもや見たことのない……空間?
「………真っ白…」
光だけが存在し、上下が分からなくなる様な空間が無限に広がっている。
「……どうなってるの?」
手探り状態で前に進むと(本当は前に進めていたのかも感覚的には分からなかった)、視界が一気に開けて綺麗な川へと辿り着いた。
「あれ?……川?………って、部屋の中じゃなかったんだ…?」
本当に不思議な場所.....
寒くも暖かくも無い。でも、とても心地良い。
「って言うか、私…どうしてこんな所に…?確か……っ、」
考えたいのに、頭の中は霞がかった様にぼんやりと思い出せない。
「…とりあえず、あの橋を渡ってみようかな」
川に掛けられた綺麗な橋、その先にはお花畑が一面に広がっているのが見える。
「.......きれい」
あんなに見事なお花畑は初めてで、早く見たくなった私は橋へと足を急がせ橋の欄干に手を掛けた。
「空良っ、その橋は渡ってはなりませんよ!」
「…………えっ、誰っ!?」
聞き慣れた、でもひどく懐かしい声……
(この声もしかして……)
「っ..........母上っ!」
慌てて声のする方を見れば、やはり母上の姿が!
「空良、その橋を渡ってはいけません」
「っ、なぜですか?渡らなければ母上の元へは行けません。……母上、ずっとお会いしたかった……」
夢で見るのはいつも思い出の母上ばかりで、今目の前には本物の母上が…、
この橋を渡れば触れることができる近さにいるのに.......
「私、母上に話したい事がたくさんあるんです。ずっと、ずっと会いたくて、やっと会えたのに.....なぜだめだなんて言うのですか?」
涙が自然と流れて、縋る様に母上を見つめた。
「空良、あれをご覧なさい」
「……あれ?」
母上は、私と母上の間を流れる川の水面を指さした。
「何ですか?」
不思議に思いながらも川を見つめると、水面が大きく揺らぎ、何かが映し出された。