第36章 真相 〜救出編〜
「…かしこまりました」
光秀は静かに頭を下げ、俺達は目的の民家へ空良を運んだ。
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「貴様が医師か」
「ははっ」
「どんな褒美もとらす。空良を必ず助けよ!」
「はっ、ははぁっ!」
田舎の質素なこの民家には布団など無いのだろう。恐らく光秀達が急遽用意した藁と布で包まれた褥に空良を寝かせた。
「……これは」
医師は空良を見るなり言葉を詰まらせる。
「此奴の腹には子がおる。二人とも助けよ」
子を助けて欲しいと言った空良の望みは叶えてやりたい。
「お、恐れながら……」
俺の言葉を聞いた医師は空良を診る手を止めて、俺に深く頭を下げた。
「この出血量からして、お子は既に流れているものと……、もし、もし万が一にも助かっていたとしても、この状況でお二人の命を救う事は神でもなければ叶いません。私には無理でございます」
医師の言葉に嘘はないのであろう。
子の事はよく分からぬが、俺とて戦地で数え切れぬほどの人の死に様を見てきた。空良が今危篤状態であることぐらい分かる。
「…そうか。ならば空良だけは必ず助けよ」
子は……また授かるやもしれん。いや、奴が助かるのならこの先子を授からずとも構わぬ。俺には、空良のいない生活などもはや考えられぬ。
「ははっ!全力は尽くしますが、こればかりはご本人様の生命力を信じる他ございません」
「空良……」
真っ青な奴の頬を撫でる。
「すまぬ。子は助けてやれぬが、俺には貴様が何より大切だ。子を助けられなかった事への恨みは目覚めた後でいくらでも聞いてやる。だから早く良くなれ。空良!」
「御館様、早く医師に見せませんと.....」
中々空良の側を離れぬ俺に困る医師に代わり、光秀が声をかけてきた。
「......分かっておる」
だが俺がいないと奴が不安がる気がして……、己の羽織を脱いで空良の身体に掛けた。
「空良、愛してる」
青紫に変色した血の気のない奴の唇に口づけ、俺は部屋を出た。