第35章 真相
私の住んでいた越前の冬は長い。
特に山奥の地ともなれば、身の丈を超えるほどの雪に覆われる為、外から入る事も、中から出る事も困難となり、私達山の民は雪解けの日を心待ちに寒くて長い冬をひっそりと過ごして来た。
そして待ちに待った雪解けの春が来て、私は居ても立っても居られなくて、屋敷を飛び出した。
『姫様ーーーー、空良姫様ーーーお待ち下さいませーー』
侍女の呼び止める声がするけど、そんな事に構ってられない。屋敷の中でじっとしているなんてつまらない。もう冬は終わったんだもの。
吐く息はまだ白いし、小袖一枚で出て来てしまった身体は寒いけれど、雪解けで姿を表した道を、裏山に向かって走った。
この裏山からは私の住む集落を見渡す事ができ、雪解けの折には必ず一番にここへ登って春の訪れを感じていた。
だから一番乗りは毎春私。
今年もそうだと思って山を登り、見晴らしの丘までやって来た。
『はぁ、はぁ、............あれ?』
けれどもその年は違っていて、丘の上には既に先客がいた。
男性らしき影が三人.........
一人は立って丘からの景色を眺め、あとの二人はその傍で膝をついていた。
(誰だろう?)
少し近づくと公卿様らしき束帯衣装が目に入り、私はすぐに足を止めた。
(えっ?どうしてこんな所に!?)
滅多な事では旅人も通らない様な奥地にそぐわない公家装束と、きっとお付きの方々なのか、武士風情の男たち......
『誰だっ!』
(しまった!)
あまりに不思議な光景に目を奪われ、隠れる事を忘れてしまった私は、お付きの一人に見つかってしまった。
『もっ、申し訳ございません。誰もいないと思っており.........決して怪しい者ではございません!』
私は慌ててその場で平伏した。
高貴な方を直接見る事は禁じられている。下手すれば斬られるかもしれない状況に置かれ、身体はカタカタと震え出した。