第34章 嵐到来
「ふっ、俺の子がおるとはな......貴様は驚くなと言っておったが無理な話だ。子ができたなどと、驚くに決まっておる。.......貴様にはいつも驚かされてばかりだな」
いつだって幸せだと、愛らしく微笑む空良に俺は安堵していた。
それは、空良の、空良すらも気づいていない脆くも儚い気持ちの上に成り立っていたものだと、日置嘉正が現れた時から分かっていたのに.....
「幸せにしていたのではない。.......俺が貴様の幸せに包まれていただけだ.......」
いつだって、どんな俺にでも、空良は温かくその小さな身体で愛を囁き包み込んでくれていたのに......
『信長様........愛してます..........』
昨夜の空良の甘い声が耳元で聞こえる。
「俺もだ...... 空良、貴様を愛してる」
貴様がいなければ、息もできぬほどに貴様を愛してる。
もう、貴様の大きな目を不安で揺らしたりはせぬ。
悲しみの涙も流させぬ。
「もう決して間違えぬ!」
貴様を苦しめてきた全てにケリをつけて、貴様も子もどちらも助け出す。
「貴様から腹の子の話を聞いた時は今一度驚いて、そして抱きしめてやる」
だから空良、必ず無事でいろ、貴様が望んだ新しい未来の為にも........
俺の為にも........