第30章 京宴 中編
「ふっ、ならばちょうど良い。貴様を酒に酔わせたいと常々思っておったからな。今宵は、存分に俺の酒に乱れよ」
止めた私の掌にチュッと音を立てて口づけを落とすと、それを押しのけて唇を重ねた。
「んっ...............」
本当に、くらくらする............
口づけの時は、いつもはじめのうちは必死で、その後すぐに蕩けてしまうから目を開ける事はあまりしなかったけど、今夜は信長様をもっと感じたくて、そっと目を開けてみた.........
「..............っ、」
視線の先には、信長様もまた熱を孕んだ目で私を見ていて、.......思わず息が止まった........
「空良.........」
艶のかかった声が、私の名前を呼びながら唇を合わせる。
「んっ...........っ、」
愛おしいだけじゃ言い足りないこの感情を、人は何て呼ぶのだろう?
「....はぁ、.......っ、信長.....様........っ、」
「空良......」
あなたが私の名を呼ぶだけで、こんなにも自分の名前が特別で愛おしいと思える。
角度を変えて深い口づけが落とされれば、耳に聞こえてくるのは、唾液の絡み合う音と私の吐息......、そして襦袢の紐をシュルシュルと解いていく衣擦れの音..........
「ふっ...........っん、.......ふぁ......」
紐を解かれると、急かす様に襦袢が脱がされ褥に沈められる。
息を吐く間も与えられず口づけられ、頬に当てられていた大きな手は首筋を滑り下りて、私の胸を捕らえた。
「はっ、.........ぁっ、......ん.....」
大切な物を包む様に添えられた手の平の動きと、淫らな音を立てながら吸い付く口と舌が、私の熱を上げて行く。