第21章 焦燥
新しい朝が来た。
今日から食事の支度も手伝おうと思い、朝日が顔を出す少し前に目を覚ました。
冬が近づいて来た部屋の中、顔にかかる外気は冷たいけれど、信長様の腕の中はとても温かく幸せだ。
チラッと上を見ると、信長様はまだ眠っている。
昨夜も遅くまで公務がありお疲れに違いないのに、その後もあんなに...。
目の前の少しはだけた胸板を見るだけでも顔が熱くなるくらい、昨夜も激しく愛された。信長様との恋仲生活は体力勝負だ。
気怠さの残る身体を起こすため、そっと信長様の腕から抜け出そうとすると、途端にギュッと抱きしめられた。
「っ、信長様、起こしてしまいましたか?」
眠りの浅い信長様の腕から抜け出すのは容易ではない。
「こんな早くからどこへ行く?」
「あ、本日からお食事の支度も手伝おうと思いまして。今朝は特別に政宗が料理を教えてくれるって約束をしてるんです」
料理は一通り母上から習ったけど、この城の様に見たこともない高価で希少な食材を使った事がないから、今日から時間のある時は政宗が教えてくれると言って約束をしたのだ。
「貴様、いつから政宗とそんな気軽に呼び合い約束をする仲になった?」
信長様は肩肘をついて私を訝しげに見る。
「え?この間廊下の拭き掃除でたまたま声を掛けられて、色々と話し込んでいるうちに.....」
「油断のならん奴だ。朝は貴様と過ごす貴重な時だ。作るなら昼餉か夕餉にしろ。政宗との約束など今朝は無しだ」
「えっ、それではそうお伝えしなければ、待たせてしまいますので」
約束をしたのに何も伝えずに破るなんてできない。
再度起き上がろうと試みるけど、
「ダメだ。行かさん」
信長様はギュッと私を羽交い締めして行かさないと言う。
「信長様?」
驚いて信長様を見ると、拗ねた顔をしてこっちを見ている.......
もしかして.....
「やきもち?..............あっ、」
言ってしまった後にしまったと思ったけど後の祭りで......