第20章 夢で逢いましょう
「んーーーーー、今日もいい天気」
信長様が朝廷より呼び出され京へ立って早七日。
こんなにも長い間離れた事は無かったからとても寂しいけど、近日中には戻られると、先日二度目の恋文を信長様より頂いた。
信長様のいない日々の寂しさを埋める様に城中を掃除して回ったから、もう、思い付く清掃場所は無くなってしまった。
だから今日は、信長様がお帰りになられた際にお召しになられるであろうお着替えと、その他のお召し物の天日干しをし、取り込んでいる最中なのだ。
「精が出るな。空良」
干し竿の前で大きく伸びをしている私に、秀吉さんの声が聞こえてきた。
「秀吉さん。もしかして、信長様から何か連絡が?」
予定より早く帰れるとか?
期待を胸に、部屋の縁側に立つ秀吉さんの元へと走る。
「いや、悪い。連絡は何も入っていない。だがあと少しの辛抱だ」
優しく笑うと、ぽんぽんと頭を撫でてくれる。
「はい。でも、.......朝廷からの呼び出しって事は、帝に謁見をなさるんですよね?」
「そうだ。許された者のみが上がる事のできる場で、信長様がいかに特別な地位におられるかと言う事だ」
秀吉さんは、とても誇らしげに信長様の事を話す。
「でも、私には全然想像ができません。いつもはあんなに俺様な信長様が、お公家様の前では頭を下げられるんですよね?」
「ああそうだ。だが、頭を垂れると言っても、決して媚びへつらっていると言う意味じゃない。相手に敬意を表した上で、信長様は毅然とご自身の存在感は放っておられる。その姿がまた雄々しくて、公家の姫君達はいつも隙間から垣間見ては騒いでおられる」
「そ、そうなんですね」
公家の姫君達も.........
「心配するな。信長様は今はお前一筋だ。お前だってそれは分かってるだろ?」
再度私の頭をぽんぽんとしながら秀吉さんは優しく笑う。
「はい」
毎晩愛を囁やいてくれる信長様のお気持ちを疑ってはいない。ただ、信長様の将来の伴侶となられるお方がその中にいるのかもしれないと言う事に、胸がチクリと痛む。