第19章 恋仲〜逢瀬編〜
「胸が高鳴るのは何も貴様だけではない。俺とて、貴様といれば胸が騒がしくなる」
「っ、........本当に?」
「本当だ」
拗ねた顔は照れた笑いに変わり、私に口づける。
「貴様が俺に書いた恋文の内容を言ってみよ」
「.................えっ?」
「俺の心の臓がどれ程騒がしくなるのか知りたいのであろう?」
私の顔のあちらこちらに口づけながら、信長様はなんとも無茶な要求をする。
「んっ、でも...........」
「最後の方だけで良い。文ではなく、貴様の口から直接聞きたい」
指先で顔の輪郭を撫でられ、艶のかかった声が耳元で囁けば、もう暗示にかけられたように口は動き出す。
「っ、.....き、気が付けば、信長様を好きになっていました。ん!......な、何で口づけなんか.....」
「気にするな、続けよ」
(気、気になるよ!)
「親の仇だと思っていた時でさえ、抑えられないほどに信長様の事が好きで、恋仲になってからはその気持ちが更に大きくなり、顔を見るだけで心の臓が煩く跳ねて痛いほどです。んんっ、信長様?」
「ただ聞くだけではつまらんだろう?」
私の耳を甘噛みしたり、鼻を噛んで来たりと、全然言葉に集中できない(信長様の鼓動なんて全然確認できない)
「貴様は気にせず続けよ。心の臓が跳ねて痛くて、どうした?」
「っ、......だから、んんっ、ふっ、.....もうっ、信長っ..........さ、ま?」
(あれ?............何かお腹に当たって.........)
それが何かを分かっているから、怖くてもう確認なんてできない。
「貴様が可愛く愛を囁くからだ」
「へっ?だっ、だって言えって信長様が....!」
「責任を取れ」
「はっ?責任って.........信長様?」
何で、身体を起こして私を見下ろすの?
「今宵は、容赦しないと言ったはずだ」
「えっ、む、無理無理無理っ、もうさっきで終わ、...んんっ!」
うそ.........この口づけは本気だ!!
「夜はまだ長い。遠慮せず俺に溺れろ」
「もう、無理ーーーーーっぁぁっん!!」
宣言通り、泣いても止めてもらえない濃密な夜を私は過ごし、私達なりの(信長流の?)恋仲の形が改めて始まった。