第18章 恋仲〜信長編〜
「香炉と華やかな紙をもて」
奴のいない部屋へと戻り、文机に座る。
恋文など書いたこともなかったが、奴の文に文で答えてやりたくなった。(本当は我慢の限界で空良の部屋に夜這いに行くつもりだった)
筆を持ち、真っ新な紙に己の気持ちを綴って行く。
誰よりも愛おしい空良。どう書けば、貴様に俺の思いが伝わるのか。
毎夜この腕に抱いても、愛おしさは募るばかりで、貴様の些細な言動にお預けを食らった気分になり腹を立てる俺は、俺とて知らぬ俺でどうにもならない。
あとどれ程、俺すらも知らぬ俺を貴様は教えてくれるのか。
空良、これ程に心が温かく愛おしい気持ちになるのも、全て貴様だからこそ。
貴様を、狂おしい程に愛している。
「ふっ、離れて分かるお互いの大切さか。........悪くはないが、俺はやはり我慢はできん」
文を書き終え筆を置くと、文を香炉に近づけ香を焚き染める。
文に香を焚き染めるなど、愚かな貴族達の慣わしと馬鹿にしておったが、愛おしい者に贈る文ならばそれも悪くない。
「誰かおらぬか!」
「はっ!」
「これを空良に贈り届けよ」
「はっ!」
欲を言えば今すぐにでも貴様を抱きに行きたいが、今夜は貴様への思いを募らせ一人で眠ってやる。
だが今夜だけだ。
明日からは容赦しない。空良、今夜はよく眠っておけ。