第15章 道
「父と母を無惨な死に追いやったのが信長様だと言われそれを信じてあの日まで生きて来ましたから、.......そうじゃなかったと言われ、それは心が痛みました」
都合が良かっただけとも言われ悲しかった事も事実だ。
「.......やはり恨み言か」
目を細め私を見る顕如様の心の中までは読み取れない。
けど、.......
「でも、どれだけ考えても、いつも同じ気持ちに辿りつくんです」
あの夜から、何度も何度も自問自答してきた。
「.顕如様、..........あの日、あの夜襲にあった夜、私を助けて頂きありがとうございました。私にとって顕如様は命の恩人で、それはこれからもずっと変わる事はありません」
どう考えても、結局最後はいつもこの気持ちに行き着いた。
「生きていたからこそ今私は愛する人とここにいて、前を向いて歩いて行こうと思い直すことができたんです。顕如様にあの日助けられ、私に生きる場所を与えて下さったおかげです。本当に、ありがとうございました」
顕如様をしっかりと見つめ、深く頭を下げた。
「.............お前に、礼を言われる筋合いはない。信長を討つ為、私にとって都合が良かったと言ったはずだ」
「それでも、あの日から顕如様が私に与えて下さった数々の優しさは本物でした」
顕如様の教えに従えず、私たちがこれから進む先の道は違ってしまったけれど、今回の事で私には分かったことがある。
「顕如様、.....憎しみは、憎しみしか生みません」
そしてその憎しみは新たな悲しみを連れてくる。
「私は両親を殺され、その悲しみや怒りは相手にも同じ苦しみを負わせる事でしか解消出来ないとずっと思ってましたが、それはまた、自分自身を傷つけ、周りの大切な人を傷つけ、悲しみを増やすだけなのだと分かったんです」
「小娘が分かった様な口を聞くな!貴様にとっては家族だけだろうが、私は、私を慕ってくれた数多の信徒や門徒達をこの男によって失った。お前とは憎しみの重さも大きさも違う!」
顕如様の抱える大きな苦しみが、その叫び声に現れている気がした。
そして、そんな顕如様を見つめる蘭丸様にも......