第15章 道
「お前に教える義理などない。ただ、お前如きでは太刀打ちできぬ相手とだけ教えておいてやろう」
「どう言う意味だ?」
「言葉通りの意味だ。空良の両親はある高貴な方の怒りに触れその制裁を受けた。あれはただの夜襲ではない」
信長様が昔付けたという顔の古傷を指でなぞりながら、顕如様は苦々しい表情を浮かべる。
「高貴な方って、.........朝倉様の事ですか?」
思わぬ真相が飛び出し、私も質問せずにはいられない。
「ふっ、朝倉など、そのお方に比べれば高貴なうちにも入らぬ」
「それでは一体誰が........父と母がどんな失礼を......」
朝倉様も確か、御公家様や文化人との交流を好む方だと聞いたことがあるけど、顕如様はそれ以上の人物だと言う。
しかし高貴な方など、いつあの地を訪れたと言うの?そんな事、一度もなかったはずなのに......
突然の真相に、脚はガクガクと震え出し、心の臓が痛い位に胸を打つ。
「顕如、其奴の正体を言え」
信長様はスラリと刀を抜いて顕如様へと向けた。
「信長、....お前のそうやって何でも刀でものを言わせようとする所に虫唾が走る!」
「ならば死ね」
ヒュンっと、なんの躊躇いもなく信長様は刀を振り下ろした。
「信長様っ!」
「顕如様っ!」
まるで、あの丘での光景を思い出させるかの様な二人のやりとりに、私と蘭丸様が同時に叫んだ!
キィーーーンと刀同士のぶつかり合う音が闇夜に響く。
見張りの兵を倒した時に奪ったのか、いつの間にか刀を手に持つ顕如様は、信長様の太刀を受け止める。
「坊主に刀か、.....ふっ、破戒僧に相応しい出で立ちだな」
「魔王に言われても、痛くも痒くもない。ここで貴様の命を奪えば、無残に散っていった我ら同胞の恨みも晴れると言うもの」
キィーーーンと、再び刀同士がぶつかり合い、二人は間合いを取った。