第14章 寄り道 後編
「くっ、......空良」
「んっ、いやっ!.........んんっ」
口付けを拒む奴の唇に指を入れて無理矢理にこじ開けると、舌を差し込んで呼吸を奪う。
「んっ、........ん」
たどたどしく俺の舌に応える空良。
この唇も、舌も、空良の身体の全てが俺しか知らないと言う事に堪らなく興奮する。
「空良 、貴様を抱くのは後にも先にも俺だけだ。しかと覚えておけ!」
「あぁっ!!」
容赦なく抱かれた空良はその日、俺の腕の中で意識を失った。
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尾張の小国にいた頃は物事が上手くいかず歯痒い事も多かったが、天下布武を唱えてからは己の思い通りに事を進めて来た。
そんな俺にとって、俺を見ようともしない空良に苛立ちを覚え、その気を引きたくてかなり辛い事を強いてきた自覚はある。
「許せ、空良」
まだ深い眠りに落ちたままの空良の頬を撫で、口づけを落とす。
それでも貴様は俺を愛していると言って、何物にも代え難い幸福感を与えてくれた。
「貴様が俺を愛した事を決して後悔はさせん」
貴様の全てを俺に捧げた様に、俺も持てる全ての物を貴様に捧げよう。
「空良、そろそろ起きよ。秀吉が鬼の形相で待っておる。俺たちの城へと帰るぞ」
「んっ............」
気怠そうに身じろく空良の姿が愛らしくて、己の欲はまたもムクムクと起き上がる。
「おい、俺の我慢がきく内に早く起きろ。どうなっても知らんぞ」
起きた貴様をもう一度抱こうとすれば、きっと貴様は顔を真っ赤にして怒るであろうな。
「空良、起きよ」
「ん、信長様............好き」
夢を見ておるのか寝ぼけておるのかは知らんが、理性を崩すには十分過ぎるほどの言葉が空良の口から漏れ、目を閉じながらも微睡んだ様子で俺に腕を巻きつける。
「っ................、おい、...........これは、誘っておるで間違いないな?」
結局寝起きから抱かれる事になった空良は、安土までの道のりを俺の腕の中でぐっすり(ぐったりか?)眠りながら帰ることになった。