第2章 信長の侍女
広いお城の中は、どこに行けば出口に繋がるのか全く分からず、ウロウロしていると、人の話し声が襖から聞こえてきた。
「何..............?」
顕如様の元へ帰る為の手土産にと思い、少し話を盗み聞こうとした時、
「遂に尻尾を出したな小娘」
「んっ!」
声がしたのと同時に背後から口を手で塞がれると、その男は私を抱えたままその襖を開けた。
バシンっと、勢いよく開いた襖の先は大広間。
そして多分、軍議の最中。
信長を上座に、広間には僅か4名の武将らしき男達と、
「御館様、城内をうろつく小ネズミを捕まえました」
襖の前で私捕らえたこの銀髪の男だけ。
噂通り、信長は側近以外を信用しない。
そして、裏切り者には容赦なく鉄槌を下す。
「ほぅ、見たことのある小ネズミだな」
信長はニヤリと口角を上げ、スッと上座から立ち上がった。
「光秀、そいつを寄越せ」
そして、不敵な笑みを浮かべてこちらへと歩いてくる。
(今度こそ殺される.....?)
ドクン......ドクン......ドクン......ドクン......
信長の手が伸びて私の着物の両襟を掴み強引に引き寄せた。
「やっ、...........」
予想した痛みはやって来なかった........けど、
「んっ.......!?」
昨夜されたような深い口づけで唇を塞がれた。
「やっ、.........ん、......ん」
ここは、大広間で軍議の最中だと分かっているんだろうか?
焦る私に構わず、信長はどんどん私の呼吸を奪って行く。
周りからは、ピューっと口笛を吹く音や、唖然とする声、ため息などが聞こえてくる。
「んぅ........っ.....」
一気に力が抜け、落ちる手前で信長が抱き上げた。
「ふっ、そのまま大人しくしておれ」
悪戯に笑い私を抱き上げたまま上座へ戻ると、そのまま腰を下ろした。