第12章 寄り道 前編
差し伸べられた手を取り丘を降りて、織田軍の陣まで一緒に歩いた。
私の屋敷を襲った人物が信長様ではないと分かった今、新たな犯人探しをしなければいけないし、囚われた顕如様と蘭丸様の事も何とかしたい。
けれど今は、繋がれたこの手の温もりを感じていたい。
そして私には、ちゃんとけじめをつけなければいけない事がある。
既に撤収作業が終わり、私達を待つのみとなっていた織田軍のみんなは、私を優しい笑顔で迎えてくれた。
「あの...........」
皆んなが私を見ている。
言わなければいけない事も謝らなければいけない事も沢山ある。そうしなければ私は皆んなの仲間に入る資格はない。
でも......何から話そう。
「あの、私........」
「お前、掃除の途中で迷子になったんだって?」
「えっ?」
秀吉さんが私の言葉を遮った。
「もう迷子になるなよ?こんな所まで毎回お前を探しに来れるほど俺たちは暇じゃないんだ」
ぽんぽんっと、秀頼さんは笑顔を浮かべて私の頭を撫でた。
「ここに来る事自体、ずっと反対してた人が何言ってるんですか?」
家康さんが呆れ顔で突っ込みを入れる。
「っ、家康お前っ、そう言う事は言うな」
秀吉さんはバツが悪そうに家康さんを睨む。
「それにしても、久しぶりに顔を見たが、お前はそんなに膨れっ面であったか?」
今度は光秀さんが、私の腫れた顔をマジマジと見ながら意地悪く言ってきた。
「っ、これは転んで顔を.......」
「ほぅ、顔だけ強打するとは器用な転び方のできる娘だ」
その顔は全てを分かったようにニヤリと口に弧を描く。
うー、信長様と同じ事を......この上司にしてこの部下ありだわ......
「空良様、私が城内の地図を差し上げますので、次からはそれを見ながらお掃除して下さい。きっともう迷いませんよ」
笑顔の爽やかな青年、確か.......三成さん?は本当に私が迷ったと思っているのか、真剣な眼差しで話しかけてくれる。
「三成、お前が話に入るとややこしくなる。黙ってなよ」
家康さん......は、もしかして...三成さんの事が嫌い?
「まぁ、なんだ。俺たちが言いたいのはだな....」
眼帯の人が皆をまとめ上げるように声を上げた。