第8章 魔王の告白
「話の通じん奴だ、拭いてやると言っておる。貴様を抱いた後で.....」
少し拗ねた顔をしながら信長様はいとも簡単に距離を縮め、その唇は私の顔のあちらこちらに口づけを落とす。
「っ、だから.........抱いてもいいなんて一言も言ってません!」
口づけ攻撃から逃れようと、私は必死で顔を振り動かす。
「病み上がりの時くらい、強情は捨てて素直に言うことを聞け」
「病み上がりの者を抱くつもりの人に言われたくありません」
病み上がりだと思うなら、そっと寝かせるのが普通でしょ!!
「ふっ、確かにそうだな。だが無理はさせん、子守歌程度に抱くだけだ」
「子守歌程度って.......」
それはどんな程度?(確かに抱かれだ後は疲労でぐっすり眠りに落ちるけど........)
こうなるともう、会話は一層成り立たない。
信長様の思う通りに事は進められてしまう。
「いつか貴様の口から、貴様は俺のものだと言わせてみせる」
不敵な笑みを浮かべる魔王に捕われた私はもう何も抵抗できず.......
「今宵は俺の思いを存分に受け取れ。............空良、愛してる」
「っ...、んっ..........」
吐息の触れる距離で愛を囁かれされる口づけは想像以上に甘くて.........
受け止めてはいけないと頭では分かっていても、熱を与えられればどんどん思考は奪われていき、その夜は魔王いわく子守歌程度の甘くて優しい腕に溶かされていった................。
『あなたを何よりも愛しみ、強く愛してくれる殿方の姿が私には見えるのです』
母上、それは.........信長様の事なのですか?
惜しみなく与えられる信長様の思いと自分の中にある二つの思いの狭間で、私はどうすればいいのかが分からなくなっていた。