第9章 少しだけ未来の話(銀時裏夢)
硬直する新八をよそに、銀時はやれやれと寝室を片付けはじめる。
「え、銀さん、子どもって……遼さんの承諾得たんですか?」
「ぱっつぁん、お前俺を何だと思ってんだよ?」
「いや、銀さん基本人の話聞かないじゃないですか。だから、遼さんの返事を都合良く受け止めて勘違いしてるんじゃないかって」
銀時の手がピタリと止まり、新八は「やっぱり」と溜息をついた。
「確認した方がいいですよ。遼さん優しいから、流れで答えちゃったって可能性だってありますし」
「……俺ちょっと、出かけてくる」
「三時までには帰ってきて下さいね。依頼人の方が来ますから」
新八の声を背中に聞きながら、銀時は足早に遼の職場に向かう。
遼が勤めているのは、かぶき町の外れに出来た洋菓子が売りのカフェだ。
店に着くと、遼が客席に座った男達と何事か話している最中だった。
「あれは……真選組の奴らじゃねぇか」
近藤、土方、沖田の三人が、何やら楽しげに遼と会話している。
銀時はずかずかと四人に近付くと、遼と彼らの間に割って入った。
「銀ちゃん?」
「旦那じゃねぇですか、どうしたんですかィ?」
「人の嫁に馴れ馴れしくしないでくれるかなァ」
「ヨメ?」
沖田に指差され、遼は瞬きを繰り返した後、「え?」と声をあげる。
「もしかして、私の事?!」
「オイ万事屋、何で当人が驚いてんだ?」
「は?
いやいや遼、昨日色々言ったじゃん!」
「えっ、本気だったの?」
驚く遼に、土方と沖田は堪らず吹き出し、近藤は銀時に憐れみの目を向ける。
「万事屋、気持ちはわかるぜ」
「一生ストーカーのテメーと一緒にすんな!」
「伝わってねぇんだから、殆ど一緒だろ」
「そうですぜ旦那ァ、こんな公衆の面前で格好つけて割って入った挙げ句フラれたなんて、近藤さんより悲しい人生じゃねぇですか」
目尻に涙を浮かべて笑いを堪える沖田は、取り出したスマホで銀時の写真を撮った。
「何してんのォ、沖田くぅん?」
「いや、あんまり面白かったんで、旦那の所の眼鏡に送ってやろうと思って」
「殺すぞ」
沖田の胸ぐらを掴んで凄む銀時に、遼は慌てて「こんな所で止めてよ」と嗜める。