第9章 少しだけ未来の話(銀時裏夢)
抱きしめられ、遼は小さく「ばか」と呟く。
その言い方に、銀時は堪らず喉を鳴らして笑った。
「本当、お前を好きになって良かったよ」
「?」
「俺は今、幸せだよ」
「……うん、私も」
二人は顔を見合わせて笑うと、ちゅっと音を立てて口吻る。
「ありがとう、銀ちゃん。私を好きになってくれて」
遼は銀時に抱きついて、その胸に頬を寄せて目を閉じ、微睡みに身を委ねた。
「おやすみ、遼」
遼の体をしっかり抱きしめて、銀時も目を閉じる。
行為の後の気怠さもあって、ゆるゆると眠気がやって来た。
「なぁ遼、俺は血の繋がった家族がいねぇから、家族とか子どもってのが、本当はよくわからないのかも知れない。けどな、お前と家族になるのが幸せなんだって事はわかるよ」
独白のような銀時の声を聞きながら、遼は夢の世界へと落ちていった。
いつの間にか銀時も眠ってしまい、隣に温もりがない事に気付いて慌てて飛び起きる。
「夢、じゃねぇよな」
裸である事からも、夢ではない事は確かだ。
とりあえず下着と寝間着を身につけて居間に行くと、机の上に置き手紙が置いてあるのを見つけ、確認する。
「何々、『おはよう。片づけ出来なくてごめんね。仕事に行ってきます。朝ご飯は冷蔵庫にあります』……すっげードライだな。せめて、愛してるーとか、ちゅっとか有ってもいいだろうが」
大きな欠伸を一つして、眠気覚ましにとシャワーを浴びていると、玄関から「おはようございまーす」と新八の声がした。
風呂から出て居間に戻ると、明らかに軽蔑した目の新八に睨まれ、思わず後ずさる。
「何だよ」
「ここは銀さんの家だから仕方ないとは思いますけど、せめて片付けくらいしてくれませんか?」
「片付けぇ?
──あ」
寝室を覗き込むと、経験のない新八でもわかるほど行為の跡が濃厚に残っていた。
「神楽ちゃんが居なくて良かったですね。今日は午後から一件依頼が入りましたから、ソレ、さっさと片付けて下さい」
「わかってるよ!
ったく、別にやましいことしてたってわけじゃねぇのに」
「遼さんと付き合ってるのは知ってますけど……」
「遼とは、子ども作るって話になったから」
「は?」
「そういう事だから」