第9章 少しだけ未来の話(銀時裏夢)
「別に俺は大丈夫だよ。だからもう、いいんだ」
突き放すような言い方の銀時に、遼は首を傾げる。
「銀ちゃん、本当にどうしたの?」
「だから、何でもねぇよ!」
思わず声を荒げた銀時に、遼はビクリと震えた。
はっとした銀時が謝ろうとした瞬間、遼がベチリと銀時の頬を叩く。
「何を怒ってるのか知らないけど、怒鳴らなくたっていいでしょ。言いたい事が有るならちゃんと言ってよ」
「──わかったよ。じゃあ言わしてもらうけどな、一体誰の子どもなんだよ」
「は?」
「だから!遼の腹の子だよ!」
「……私のって、何の話?」
首を傾げる遼に、銀時は思わず「妊娠したんだろ?」と聞き返した。
「……銀ちゃん、覚えがあるの?」
「ねぇから聞いてんだろ!」
「ふぅん。じゃあ、私が浮気して妊娠したって思ってるんだ」
「え?」
「へー。そっかぁ。成る程ねー」
やたらニコニコしている遼に、銀時は腰が引けてしまい、じわじわと後退る。
「ちょっ、遼ちゃん?」
「あっ、忘れ物があったんだー。おじゃましまーす」
遼は万事屋に上がると台所に向かい、置いていた自分の歯ブラシをゴミ箱に捨てた。
その足で寝室に行き、押し入れにある風呂敷包みを引っ掴むと、玄関に戻り、銀時を一瞥する。
「じゃあ、さようなら」
「えっ、ちょっ、ストップストップ!!」
我に返った銀時が遼の手首を掴んで止めると、冷ややかな目を向けられた。
「何?」
「いや、その、ちゃんと話し合おうぜ。な?」
「坂田さんは、私が不貞を働いたとお考えのようですが、そのような事実はございませんので。ではこれで」
「ちょっ、遼!悪かったって!神楽から、遼が妊娠したって聞いて、俺も動揺して」
「神楽ちゃんが、私が妊娠したって言ったの?」
遼に尋ねられ、銀時は改めて神楽の言葉を思い出す。
「いや、えーっと、確か「赤ちゃんが出来たから相談したい」って」
「……ごめん、私の伝え方が悪かったみたい」
「へ?」
「私は神楽ちゃんに「先輩に赤ちゃんが出来たから、出産祝い何にするか相談したい」って言ったの」
ポカンとした銀時に、遼は改めて「ごめんね」と謝罪した。