第6章 絆される・続(神威裏夢)
それ程に驚いた。
「遼が寝てる間に、新しい指示が来たから進路変更中。後八時間もすれば到着するよ」
「そうですか。で、作戦は?」
「もちろん、皆殺し」
笑顔で告げる神威に、阿伏兎が「違ぇだろ」とつっこむ。
「先ずは交渉しろってのが上からのお達しだ。その後に、第七師団の武力をもって鎮圧しろってよ」
「要は皆殺しだろ?」
「オイバカ団長、話聞いてたか?」
一向に噛み合わない二人に、遼は苦笑しながらも上からの指示に目を通した。
どうやら先行している第三師団の援護という名目のようで、指定された惑星に降り立った後は自由に暴れて良いらしい。
「では副団長、私は備蓄の確認に──」
「何言ってるの?
遼は仕事を頑張った俺にご褒美をあげる仕事があるじゃないか」
「何言ってるんですか?
これから戦闘だっていうのに……」
呆れる遼に、阿伏兎が軽く咳払いをする。
「んー、あー、遼、悪いが暫く団長の相手をしててくれるか」
「はあ?!」
「お前さんが嫌じゃない程度でいいから。な、頼む」
疲れ切った顔の阿伏兎に頼まれ、遼は渋々「わかりました」と承諾した。
「では団長、部屋にお戻り下さい」
「あれ、遼は一緒に行かないの?」
「少し用意してから伺います」
「俺は別に下着の上下が揃ってなくても気にしないよ」
「死ね」
吐き捨てて自室に戻った遼は、湯沸かしと茶器、取って置きの茶葉を用意して盆に乗せると神威の部屋に向かう。
神威の部屋の前で両手が塞がっている事に気付いた遼は、ガンガンと扉を蹴った。
「団長、開けて頂けますか」
容赦なく蹴りつける遼に、通りがかった団員が慌てて盆を預かる。
礼を言った遼は、あっという間にロックを外して部屋の中に入った。
「団長、来ましたよ」
団員から盆を受け取り机の上に置くと、ベッドに転がる神威に近付く。
「……お休み中のようですので、帰りますね」
「えーっ。せめてさぁ、触ってみるとかしないの?」
「お目覚めなら、お茶はいかがですか」
不満げな神威をよそに、遼は持ってきた茶器を並べ、急須に湯を注いだ。
立ち込めた香りに、思わず神威も体を起こしてのぞき込む。
「疲労回復にいいですよ」
「ふうん」