第6章 絆される・続(神威裏夢)
副団長室を訪れると、部屋の主である阿伏兎と神威が席を共にしていて、遼は思わず顔を顰める。
「そんな顔しなさんなって。確認したいのはコレなんだ」
分厚いファイルを渡され、遼は黙ってそれを開いた。
「……地球の、それも江戸幕府の資料ですね。幕府と春雨幹部の収賄について記載されているようですが、これが何か?」
「俺たちじゃあ文字が読めなかったんでな」
「ああ、そうですね。ではこれは、幕府の官僚の書き付けか何かでしょう。用件はこれだけですか?」
「ん、いや、まぁな」
随分歯切れの悪い阿伏兎に遼が首を傾げると、黙っていた神威が口を開く。
「阿伏兎に聞いたんだけど、教えてくれなくってさ。このままだと俺、夜も十時間くらいしか眠れなそうだから」
「何をお知りになりたいんですか?」
「遼と阿伏兎の馴れ初め」
「……語彙力が足りないようですね。副団長と私が恋仲になったことなど、一度もありませんが?」
「だから言っただろ、団長。俺と遼は何でも無いって」
呆れた様子の阿伏兎に、神威はにこにこと笑ったまま「でもさ」と言葉を続ける。
「一度もヤってないって事はないだろ?
遼とするの、すっごく気持ちよかったし」
「団長」
「口でするのは下手だったけど、挿れたら最高だったよ。何て言うんだっけ、カズノコ?ミミズ?」
「どこで覚えてきたんだよ」
とんでもない台詞を連発する神威に、阿伏兎は溜息をついて黙ったままの遼に視線を向けた。
「大丈夫か、遼」
「大丈夫ですよ。何も考えたくないので、ずっと般若心経唱えてますから」
にっこり笑って答える遼に、般若心経の意味がわからない阿伏兎も顔を引き攣らせる。
「阿伏兎は遼とヤりたいと思わないの?」
「思わないね。コイツを拾った時からそんな感情は一切ねぇよ」
「何で?」
「コイツが何でここに居るか知ってるからだ」
阿伏兎と遼の視線がかち合い、二人は黙って見つめ合う。
「ナニソレ、すっごい意味深」
「副団長は、命の恩人です」
「あ、オイ!」
「天人の血を引く事がバレて、婚約者に殺されそうになっていた所を助けて頂いたんです。その時に、私の命と忠誠は副団長にお預けしました」
「……というわけだ、わかったか団長?」