第1章 行方不明の片想い(銀八夢)
意地悪く聞いてくる坂田先生に、イラッとする。
「そうです」なんて答えたら、困るくせに。
腹が立つ。
だからほんの少しの意地悪のつもりで話に乗ってみる。
「そうなんです。坂田先生と離れたくないので、銀魂高校に残りたいなって思っていて」
「へ?」
煙草が落ちた。
ああ、何て間抜けな顔なんだろう。
というか、何でこの人が好きなんだっけ?
「冗談ですよ。煙草、ちゃんと捨てないと危ないですよ」
呆然とする坂田先生をよそに、私は余裕綽々煙草を拾い、窓際に置いてあるポケット灰皿に吸い殻を捨てた。
「いつまで間抜けな顔してるんですか?」
「え、あ、いや……」
「動揺し過ぎですよ。坂田先生」
坂田先生の反応が、嬉しいような、むず痒いような……
「遼」
そんなことを考えていたら、突然呼び捨てで名前を呼ばれた。
いつもは「神武先生」とか「遼ちゃん」って呼ぶくせに。
目が合って、瞬間的にマズいと感じた。
この先は、シリアス展開だ。
どうしようかとドキドキしていると、『ピンポンパンポーン』と間抜けなチャイムが鳴った。
ゴホンという咳払いがして、教頭がしゃべり出す。
『えー、坂田先生、坂田先生、至急職員室に帰ってくるように。至急っつったらスグって事だぞ。わかってんだろーな』
ガシャンと音がして校内放送が終わる。
「さ、坂田先生、呼ばれてますよ」
「ん?ほっときゃいーって。んな事より遼……」
言いかけた坂田先生を遮るように、また『ピンポンパンポーン』とチャイムが鳴った。
今度は『あー、あー、テストテスト、マイクのテスト中』というハタ校長の声が流れる。
『あー、坂田先生、坂田先生、至急職員室に帰ってくるように。え?さっき教頭が言った?』
間抜けな声の後『ピンポンパンポーン』と、放送を終えるチャイムが流れた。
「呼ばれてますよ」
「ほっとけ。なぁ、遼」