第1章 行方不明の片想い(銀八夢)
二度あることは三度ある。
『ピンポンパンポーン』というチャイムが鳴ると、今度は坂本先生の声が流れた。
『金八、至急職員室に来るように言われとるぞ。え?もう放送した?あはははは』
坂本先生の声が終わるか終わらないかの内に、また『ピンポンパンポーン』。
『えー、あー……あれ、何て言うんだっけ?』
マイクが切れた。
服部先生の声だった。何て考えていたら、坂田先生がインターホンを取ってがなる。
「オメーらしつけーんだよ!何回呼べば気が済むんだ!?こちとら良い雰囲気だってのに、邪魔すんじゃねーよ!」
ガチャンッ!
そんなに叩きつけるように置いたら壊れるんじゃないか。
「ったく、アイツらいい加減にしろよ!」
『ピンポンパンポーン』
また鳴った。
『おい銀の字、インターホン壊したら弁償だそうだ。覚悟しとけよ』
『あはははは』
源外先生の声の後、坂本先生の笑い声が響く。
どんな放送の使い方だ。外にも聞こえるのに。
また銀魂高校の評判が偏っていくではないか。
そんな事をぼんやり考えていたら、坂田先生がすぐ傍に来ていた。
「もうあいつらは知らねー。折角のいい雰囲気壊してくれやがって」
「げ」
「もーちょい色気の有る声出せねーのか?」
「ぐえ」
目の前に坂田先生の顔があったせいで、ますます変な声が出た。
心臓に悪いから、あまり近づかないでほしい。
「さ、坂田先生?」
「ん?」
「離れて頂けますか」
「何で?」
「た、煙草くさいから」
あ。イラッとしてる。
いやだって、突然近付いてこられたら、どう反応していいか分からない。
すごく逃げたい。喉がカラカラに渇いて声が出ない。
これ以上傍に来ないでほしいのに、坂田先生の腕が私に伸ばされて……
「うおっ!何で泣くんだよ」
「え?」
涙が溢れていた。
慌てて目元に手をやるが、次から次に涙が流れて収まらない。
「す、すみませ……っ、何か」
止めようと思えば思うほど涙が溢れて、頭が混乱する。
坂田先生が近付いて来たのは……嫌じゃなかった。
「遼、大丈夫か?」
来ないで欲しい。
いや、来て欲しいのかもしれない。
「も、やだ……」
全部坂田先生が悪いんだ。
私の事なんか覚えてないくせに、私をおちょくって。
私が片想いしてるなんて知らないだろうし、教える気なんてないけど、涙の理由は全部坂田先生だ。