• テキストサイズ

魂の色【銀魂短編夢】

第30章 嫉妬の形は人それぞれ


【志村新八】

通りの向こうに恋しい人の姿を見つけた新八は、思わず駆け寄ろうとして慌てて踏みとどまった。

(遼さんと話してるの……誰だろう?)

傍目には随分楽しそうに見える遼の様子に、胸の辺りがざわざわとしてきて、思わず着物の袷を握り締める。
同時に、腹の底から沸き上がる感情に突き動かされるように駆け出した。

「遼さんっ!」
「ん?
 あ、新八くん」

振り返った遼の顔が、自分を呼んだのが新八だと確認できた途端、はにかむような笑顔になる。
呼吸を忘れるような衝撃に、新八は足を止めてしばしその姿に見入ってしまった。

「新八くん、大丈夫?」
「へ、え、あ、だっ、大丈夫です」
「良かった。でも、そんなに慌ててどうしたの?」
「あ――」

尋ねられ、新八は言葉を失ってしまう。
勢いをつけて声を掛けたものの、その後の事は何も考えていなかったからだ。

「えーっと、その……遼さんの姿がみえたので、思わず」
「そっか……」
「す、すみません」
「謝らないでよ。嬉しかったし」

遼は俯く新八の頭をよしよしと撫でると、話し込んでいた人物に「さようなら」と挨拶をして新八の袖を引いて歩きだす。
状況のわからない新八は、目を白黒とさせたまま、されるがままに後をついて歩いた。
暫く歩いて人気のない路地へ入ったところで、遼は足を止めて目線よりやや上にある新八の目を見つめると、形の良い唇に笑みをのせる。

「新八くん、さっきは嫉妬してくれたんだよね?」
「うっ、え、あ、はい……すみませ――」
「もうっ、謝らないの。私は素直な新八くんが好きなんだから」
「――っ」

どこか意地悪な遼の微笑みに、新八は耳まで真っ赤になり、ごくりと喉を鳴らした。先ほど沸き上がった嫉妬心よりももっと激しい情欲が、頭の芯まで支配していく。
その様子に気付いた遼は、新八の手を取ってゆったりと指を絡めた。

「ね。嫉妬してくれたお礼、させてくれる?」
「えっ、あ、えっと――お手柔らかに、お願いします」

頷いて、絡めた指先に力を込める。
それから先は、二人だけの時間――。


[おわり]
/ 337ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp