第28章 一世一代の恋の行方(銀時裏夢)
薄暗い部屋の中で、銀時に抱きしめられた遼は甘えるようにその胸に頬を寄せた。
(私はまた、銀ちゃんに恋してる)
耳の奥に響く心音は、恋を自覚したその瞬間に聞いたあの音と同じで、涙が溢れそうになる。
(きっとこれは、最初で最後の恋。
だから私は、何度でも銀ちゃんに恋をする。
――ん?)
ふと、抱きしめられた腕が離れていくのを感じて遼は銀時を見上げた。
「銀ちゃん?」
「なぁ、今日は一緒に入ろうぜ」
「入るって?」
「勿論、風呂だよ。んで、洗いっこしようぜ」
思いがけない展開に、遼は耳まで真っ赤になった後、小さな声で「いいよ」と答える。
「そうだよなぁ、やっぱりダメ――って、え?」
「だから、いいよって」
「えっ、ウソ?マジで??お風呂で洗いっこだぞ??」
「何回も言わなくてもわかってるよ。今日は特別」
予想外の反応に狼狽える銀時に、遼は「あんまりしつこいと止めちゃうよ」と苦笑した。
「ちょっ、ダメダメ!よしっ、そうと決まったらさっさと入るぞ!!」
「大げさだなぁ」
「こんなチャンス、次いつあるかわかんねぇんだぞ。一回だって無駄にできるか」
「……」
張り切る銀時に白い目を向けながら、遼は自身が随分大胆になっていることに僅かばかり戸惑ってしまう。今日は銀時に何を頼まれても受け入れてしまいそうな気さえしていた。
「遼、どうした?」
「え、あ……ううん。ほら、早くお風呂入ろ」
「お、おう」
積極的な遼に驚いている銀時を促して脱衣所に入ると、躊躇う前にと着物を脱いで下着姿になる。露わになった素肌を映す鏡をじっと見つめた遼は、左胸の上にある醜い引き攣れをそっと撫でた。
随分薄くなったとはいえ、遼の体には無数の傷跡が残っている。消えない傷はまるで自分の心を映しているようで、遼は知らず眉を顰めた。
そんな遼の悩みを打ち消すように、銀時の明るい声が響く。
「おっ、可愛い下着。もしかして俺に見せるために着けてきたのか?」
「違う、けど……ありがとう」
「ん。まぁ、俺としてはもっとこう、紐っぽいのとかスケスケのとかの方が好みなんだけど」
「銀ちゃんのエッチ」
「男はみ―んなエロい事ばっか考えてんだよ」