第28章 一世一代の恋の行方(銀時裏夢)
そんな遼にお構いなしに、銀時はさらに強く抱きしめた。
その様子にすっかり呆れた神楽は、大きなため息をつく。
「銀ちゃん、いい年してはしゃぐなんてみっともないアル」
「うるせー。幸せだからいいんだよ」
「しょうがないアルな。今日は私が身を引くネ。留守番してるから、二人はどこへでも行ったらいいアル」
やれやれと肩を竦めた神楽は、居間に戻って社長椅子にどっかりと座ると、傍らに定春を呼び寄せてその頭を撫でた。
その姿に銀時と遼は顔を見合わせて笑い、身を起こす。
「じゃあ、お言葉に甘えてデートでもするか」
「パチンコ屋巡りはデートとは言わないからね」
「あのなぁ、俺がいつ……」
「先月。結局素寒貧になって、高級ディナーが屋台のラーメンになったんだよ。まぁ、ラーメンは美味しかったけど」
「……お前本当、いい子だよなぁ」
しみじみと答える銀時に、遼は少し不満げに唇を尖らせた。恋人同士になってからも、銀時は時折こうして遼を子ども扱いする。
実際、遼は銀時より幾分か年下なので仕方が無いのかもしれないが、いつまで経っても変わらない態度は遼を寂しくさせた。
「遼?」
「なぁに?」
「何か、怒ってねぇか」
「別に。ほら、出掛けるんでしょう。早くしないと暗くなっちゃうよ」
銀時の手を取った遼は、強く腕を引いて玄関へと向かい、見送る神楽に手を振って万事屋を後にする。万事屋から少し離れた場所まで来た遼は、目的地も決めていなかった事を思い出して歩みを止めて銀時を見上げた。
「どうした?」
「どこに行くか決めて無かったな、って。銀ちゃん、どこか行きたい場所ある?」
「お前と二人きりになれるところ」
即答した銀時に、遼は一瞬意味が解らず首を傾げる。何とも愛らしいその姿に、銀時は堪らず遼を抱き寄せて腕の中に収めた。
「銀ちゃん?」
「悪い大人でごめんな。けど今日は、我慢できそうにねぇんだ」
「銀ちゃんが我慢できてた事ってある?」
「……ふっ、それもそうだな。じゃあ、今日も我慢せずに我が儘通させてもらうかな」
「仕方ないなぁ」
困ったように笑った遼は、銀時の手を握り彼が望む場所へと歩みを進める。