第28章 一世一代の恋の行方(銀時裏夢)
ぼんやりとしていると、玄関の扉が開くとともに「ただいまー」と神楽の声が響き渡る。
「んうっ…ん?」
「あ、起きちまったか」
「何か今、神楽ちゃんの声がしたような……」
「おお、帰ってきたみてぇだからな」
言いながら、銀時は遼を抱き寄せた。
「え、あの、神楽ちゃん帰って来たんでしょ?」
「だから?」
意地悪く笑った銀時に、遼は慌てて「離してよ」と訴えるが、その反応は逆効果だったようで、ますます強く抱き気締められる。
「銀ちゃん、お客さん来てるアルかー?
あれ、居ないネ?」
襖一枚挟んだ向こうから神楽の声が聞こえ、遼は銀時から離れようとじたばたするが、銀時は遼を胸に収めたまま神楽の声に返事をした。
「神楽ぁ、こっちに居るぜ」
「あれ?お客さんじゃないアルか――」
不思議に思いながらも襖を開けた神楽は、にやにやと笑いながら遼を抱きしめている銀時に白い目を向ける。
「何やってるアルか」
「幸せそうだろ」
「いちゃつきたいならヨソでやるネ」
「添い寝してただけだって。なぁ、遼?」
尋ねられ、遼は耳まで真っ赤にしてこくこくと頷いた。
「つーか、俺んちなんだからいちゃついたって別にいいだろ」
「平になったくせに生意気アル」
「誰が平だ。そのネタまだ引きずってんのかよ」
「一度決まった順位はなかなか変わらないものアル。文句あるなら力ずくで奪って見せるネ」
「お前と力比べして敵うわきゃねぇだろーが!」
賑やかにやり取りをする銀時と神楽の様子に、遼はくすくすと笑い始める。
「何だよ急に」
「いや、仲が良いなぁって思って」
「嫉妬してくんねぇの?」
「だって、家族に嫉妬しても仕方ないじゃない」
さらりと答えた遼に、銀時と神楽は一瞬驚いた後、顔を見合わせて笑った。
「ホント、敵わねぇなぁ」
「まったくアル」
和やかになった雰囲気に、遼は胸の奥が暖かくなっていくような気がして、無意識に銀時の袷を軽く握る。
「お、何だ急に甘えて」
「?」
「ナニソレ可愛すぎんだろ」
「うわぁぁっ!」
ぎゅうっと抱きしめられ、遼は思わず悲鳴を上げた。
神楽の前だと流石に恥じらいが勝る。