第28章 一世一代の恋の行方(銀時裏夢)
恋をしました。
幸せでした――
【一世一代の恋の行方】
太股の上にのせられた柔らかな髪を指先で梳きながら、遼は欠伸をかみ殺す。
穏やかで、幸せな日々。
そんな日が来るなんて、想像もしていなかった。
「眠ぃのか?」
「ううん。気が抜けちゃって」
「たまには気ぃ抜かねぇと、爆発しちまうぜ」
「わかってるんだけどね」
性分なのか、遼は休めと言われても中々思うままに気を抜けない。それが周りに気を遣わせると分かってはいるのだが、こればっかりはどうにもならなかった。
「仕方ねぇな。ほら」
「え?」
気が付くと、遼は起き上がった銀時に抱きしめられていた。
「え、あ、何?」
「一緒に昼寝といこうぜ」
「わっ!」
遼を抱きしめたまま、銀時はごろりと横になる。自然と遼は銀時の胸に頭をのせた形になり、慌てて身を起こそうとして失敗した。
「だーめ。今日は俺とゴロゴロすんだよ」
「ちょっ、待って、私が乗ったら重いでしょ?」
「軽い軽い。殆ど空気と一緒だって」
「空気は言い過ぎでしょ。まぁ、銀ちゃんがいいならいいけど」
「いいよ。ぜーんぶ俺に預けて、目ぇ閉じてみ」
遼の頭に手を置いた銀時は、そのまま自分の胸に押し付けるようにする。
言われるがまま目を閉じた遼は、銀時の胸に頰を寄せて微笑んだ。
「銀ちゃんの音がする」
「俺の音、か。どんな音なんだ?」
「優しくて、暖かくて……幸せな音」
「そっか」
僅かに聞こえる心音に耳を澄ませながら、遼は幸せを噛み締める。
規則的なその音は、遼をゆっくりと眠りへ誘って行った。
「遼?
ああ、寝ちまったか」
力が抜けて少しだけ重みの増したその感覚に、銀時は優しく微笑むと遼の頭を撫で擦る。
「優しくて、あったけぇな」
ただ傍に居るだけなのに、満たされた。
「遼…俺は今、年甲斐もなくお前に恋してるよ。きっとこの想いは、俺の最後の恋だ」
すっかり寝入った遼の油断したその表情に、ますます愛しさが募っていき、銀時は長い溜息をつく。
こんなにも誰かを想う日が来るなんて、自分でも驚いていた。しかも、すっかり恋に落ちてしまっている。