第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
「いや、そっちが言わせたんじゃないですか」
「遼も乗り気みたいだし、終兄さん、早速宿にでもしけ込みましょうぜ」
沖田の提案に、斉藤は首を横に振る。
「終兄さん?」
【遼は、総悟くんにも副長にも渡さない】
「斉藤隊長……!」
こんな状況でなければきっと惚れていたであろう斉藤の言葉に、遼の目が潤んだ。
それに気付いた沖田は、実に面白くないと顔を顰める。
「俺は終兄さんの当て馬になったつもりはないんですけどねィ」
「俺も、お前らの当て馬になったつもりはねぇぞ」
「チッ、もう来やがった」
舌打ちした沖田の背後に立つ土方は、腰の刀に手をかけて臨戦態勢だ。
三つ巴の状況に、遼がどうしようかと考え倦ねていると、月詠が息を切らせて駆け寄ってきた。
「見つけたぞ。最後の一つじゃ」
掌に載せられたそれは、ハート型に亀裂が入った型の───
「これが、愛断香」
有難い事に、この場には全員揃っている。
好機だと愛断香を握り締めると、遼は三人の前に歩み出た。
「ちょっと待って下さい!
とりあえずみなさん、こちらへ」
遼が手招きすると、意外にも素直に三人が寄ってくる。
「じゃあ、いきますよ」
「は?」
「え?」
【?】
遼は土方のポケットから素早くライターを抜き取ると、愛断香に火をつけた。
間もなくあがった煙は四人を包み込む。
「ゲホッ」
「うえっ」
煙が晴れ、四人は咳き込みながらも顔を上げた。
「……」
「…………」
【………………】
「いや、斉藤隊長のそれいらないですよね」
【せっかくだから、一緒にやろうと思って】
照れながらノートを示す斉藤に呆れつつ、遼は土方と沖田の反応を待つ。
「副長、沖田隊長、お体変わりはありませんか?」
「は?」
「いやだから、その……」
【遼を見て性的興奮状態になるかと聞いています】
「さっ、斉藤隊長?!」
そんな直接的な質問はしていないと慌てる遼に、土方と沖田は首を傾げた。
「何の話だ?」
「!」
二人の反応に、遼の表情がぱあっと明るくなる。
【良かったな】
「はい!」
手に手を取り喜ぶ遼と斉藤の姿に、土方と沖田はますます不思議がった。