第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
やっとこの騒動に決着がついたと遼が胸をなで下ろすと、月詠が「終わったようじゃな」と声を掛けた。
「はい、何とか」
「愛染香を嗅いだのは、そこの二人だったのか?」
「二人?
いえ、副長と沖田隊長と斉藤隊長と私の四人ですよ」
「……そこの男は鼻と口を覆っているが、香を嗅げたのか?」
「ん?」
斉藤を指差して尋ねる月詠に、遼は瞬きを繰り返す。
「いや、以前吉原で愛染香を焚いた時、百華の者は覆いをしていたから無事でな。その男はどうかと思ったのだが」
驚く遼が斉藤を見ると、気まずそうに目を逸らされた。
「もしかして、斉藤隊長は最初から……」
【すまない。言うタイミングを逃してしまって】
「そんなにしょげられたら、怒れないじゃないですか」
【許してもらえるだろうか?】
「いっぱい助けてもらったので、全部チャラですよ」
そう言って笑った遼に、斉藤もほっとしたような表情になった。
二人の様子に、蚊帳の外になっていた土方が煙草に火をつけながら尋ねる。
「つーか一体どう言うことだよ?」
「俺たち、何でこんな所にいるんですかィ?」
「それは、まぁ……良いじゃないですか。万事解決って事で、屯所に帰りましょう」
「いやいや、意味がわかんねーって」
「月詠さん、ありがとうございました。では、また」
月詠に手を振りながら、遼達は屯所への帰路へついた。
余談だが、土方と沖田はふとした事から記憶を思い出す事になる。
動揺する土方とは対照的に、恋心を自覚した沖田はノリ気で遼に絡むようになり、愛染香の効果が切れていなかったのかと遼を怯えさせた。
斉藤は以前より遼と交流する時間が増え、隊士達は二人を仲良しだと認識するようになっている。
そして、遼にもすっかり忘れられていた山崎は、香の効果が切れるまで幽閉されていた。
「惚れた腫れたなんて、真選組でやるもんじゃないですね、局長」
「全くだ。俺は真選組の外でやってるからセーフだけどな」
──おしまい──