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魂の色【銀魂短編夢】

第26章 束縛(沖田裏夢)


夕食を終えた遼と沖田は、ロビーに降りて土産物屋を眺めていた。

「皆さんへのお土産、何にしましょうか?」
「土産なら、近藤さんだけで良いだろ」
「良いわけないじゃないですか。んー、やっぱり無難にお饅頭ですかね。何箱買えば足りるかなぁ」

指折り数える遼に、沖田は呆れ顔で欠伸をする。楽しそうな遼を眺めるのは沖田としても満足だったが、今は少しでも早く部屋に戻って二人の時間を満喫したかった。

「神楽ちゃんやお妙さんにもお土産買いたいし……ん?」
「どうした?
 ああ、近藤さんから電話か。出ていいぜ」

沖田の許可を得た遼は、その場を離れて電話に出る。沖田はロビーに用意されているソファに腰かけると、応対している遼をぼんやりと眺めた。
仕事の電話なのだろう。自分の隣に居る時とは違い、遼の顔もとがきりりとしていて、纏う雰囲気が異なっていた。
あの顔が、崩れるように蕩ける瞬間を知っているのは沖田だけ。その事実は、絆であり束縛だ。

(惚れ続けてんのは、どっちだか)

自嘲してソファに身を沈めると、浴衣姿の女性が二人、にこにこと沖田に声を掛けてきた。

「お一人ですかぁ?」
「良かったら私たちと一緒に飲みませんか?」

鼻につくような甘ったるい声に沖田が顔を上げると、女性二人は「かっこいい」と感嘆の溜息をもらす。一瞬眉間に皺を寄せた沖田は、二人の声が聞こえなかったかのように顔をそむけた。

「この近くで、美味しいお酒の飲めるお店が――」
「うるせぇブス」
「え?」
「鏡見たことあんのか?」

何を言われたのかわからないと唖然とする二人をよそに、立ち上がった沖田はこちらへ向かって来る遼の方へ歩いて行くと、見せつける様にその手を握る。

「へ、え?」
「行くぜ」

手を引かれ、遼はこちらに向かって悪態をつく女性たちに気付き、納得した。

「総悟さん、あの人たちに何言ったんですか?」
「事実」
「いつか刺されますよ――って、そう言えば刺された事ありましたね」
「あれは刺されたフリしただけでぃ」
「知りませんよ。大事になっても」

呆れながらも、遼はそんな心配は無いとわかっている。腐っても真選組一番隊隊長だ。そうそう負ける事はないと知っていた。
けれど、無茶をするのも知っている。
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