第26章 束縛(沖田裏夢)
高まりきった遼の体が一層熱を持って僅かに震えたのを感じた沖田は、ぱっと体を離して口元を歪めた。
「総悟さん?」
「湯あたりしそうだから、そろそろ出るか」
「えっ!?」
「それに、そろそろ晩飯だしな」
呆ける遼を置いて、沖田はさっさと脱衣所に行ってしまう。
「嘘でしょ」
期待して反応していた体をぎゅっと抱きしめて湯船に肩までつかると、不満げに唇を尖らせた。
「本当、意地悪なんだから」
脱衣所から沖田の気配が無くなったのを確認した遼は、溜息をついて風呂から上がり、火照る体を慰める事も出来ずに体を拭いて浴衣を身に着ける。
髪を乾かして部屋に戻ると、すっかり寛いだ様子の沖田に遼の機嫌が悪くなった。
「随分遅かったじゃねぇか」
「……」
ぷいと横を向き、無言で怒っている事を示す遼に、沖田は満足そうに微笑む。
「ちょっと躾が足らなかったみてぇだな」
立ち上がった沖田は、不貞腐れている遼の顎を掴んで自分の方を向かせると、じっと見つめ合った。
薄茶の瞳が僅かに揺れて、二人の間を漂う空気が張り詰めたものから穏やかなものへと変わる。
「もうっ、何でじっと見てくるんですか」
「さあ、何でだろうな」
「質問に質問で返さないで下さいよ。怒るのが馬鹿馬鹿しくなっちゃうじゃないですか」
そう言って笑った遼は、不意打ちにぎゅっと沖田に抱きついた。
「っ!」
「もう少し驚いて下さい。折角甘えてみたのに」
「色気が足りねぇ」
「はいはい。それはもう諦めて下さい」
もう少しだけと、遼が回した腕に力を込めると、それに応えるように沖田が抱きしめ返す。
愛したくて、愛されたい。
貪欲なまでに求めてしまう。
「総悟さん」
「ん?」
「私、お腹空いちゃいました」
「ふっ、本当に色気がねぇな。仕方ねぇ、飯食いに行くか」
そう言って遼を離した沖田は、微笑んで左手を伸ばした。
手を繋ぐことが当たり前になっている事が嬉しくて、遼は指を絡めてしっかり握り返す。そうすると沖田の頰に朱が走り、気を良くした遼は更に密着した。
「じゃあ、行きましょうか」
「……ん。あんまくっつくなよ」
そう言いながらも振りほどいたりはしない沖田に、遼は「はい」と頷く。