第26章 束縛(沖田裏夢)
(あれ?
タオル外せとかは言わないんだ)
てっきり意地悪く指摘するかと思っていたが何も言われず、遼は訝しがりつつも浴場に入り、沖田と並んで体を洗う。
いつもより少しだけ丁寧に体を洗った遼は、タオルを湯に浸からない場所に置くと、湯船に身を沈めた。
乳白色の湯はつかると殆ど中が見えず、遼はほっと息を吐く。
「ふうっ……」
「いい湯だからって寝るんじゃねぇぞ」
「大丈夫ですよ。そこまで抜けてませんから」
「どうだかな」
くすりと笑った沖田につられて笑った遼は、ゆっくりと空を見上げた。
「そろそろ陽が沈みますね」
「そうだな。おい遼、もうちょっとコッチ来い」
「はい」
遼は素直に頷くと、殆ど触れ合う距離まで身を寄せる。
「漸く主人が誰かわかったみてぇだな」
「またそんな言い方。でも、そうですね……今日はいつもより、総悟さんの近くに居たいです」
「あっそ」
ぶっきらぼうに答えた沖田の耳が少し赤くなっているのに気付いた遼は、ふっと笑うと更に近付いた。そして、沖田の腕に自分の腕を絡めるように抱きつく。
「何でぃ?」
「少しだけ、このままで」
「仕方ねぇな。なぁ、遼」
「は……んっ」
名前を呼ばれて顔を上げると、沖田と唇が重なり、遼はそっと目を閉じた。
重なり合うだけの静かな口づけに、体の奥から言いようのない感情が込み上げる。
長い口づけに遼がのぼせてしまいそうになった所で唇が離れていき、ゆっくりと目を開いた。
「誘ってんのか?」
「乗ってくれるんですか?」
「それも主人の役目だろ」
もう一度唇が重ねられ、遼は沖田を受け入れるために口を開く。
差し入れられた舌に自分のそれを絡めて、一層体を密着させた。
「んうっ、ふっ…んくっ」
口の端から溢れ出るほどの唾液をこくりと飲み込み、遼はこの先を期待するように沖田に蕩けた視線を向ける。その眼差しに満足そうに微笑んだ沖田は、遼の首筋に顔を埋めてキスをしながら太腿を撫で擦った。
「あっ、や……総悟、さ」
身もだえする遼の体を撫でながら、沖田はその首筋や肩にわざとらしく音を立ててキスを繰り返す。