第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
腹を押さえて呻く沖田を、土方は鼻で笑うと遼を抱き寄せ、見せつけるように遼の首筋に顔を埋める。
「うわぁぁぁっ、無理、もう無理!」
「おわっ!」
殆ど半泣きで土方を押し退けると、遼は部屋から飛び出した。
廊下に出た所で、何かに躓く。
「うわっ、何っ……こっ、近藤さん?!」
倒れていたのは間違いなく近藤で、他にも隊士の姿が見えるが、いずれも気を失っているようだ。
「まさか、土方さんと沖田さんが……!?」
遼は改めて、愛染香の恐ろしさに震えた。
もう殆ど見境無しではないか。
馬鹿で物騒で江戸の平和を守る集団が、ただの馬鹿で物騒な集団になってしまう。
「そうだ、吉原に行ってみよう」
発端である吉原に行けば何かきっかけが掴めるかもと、遼は急いで隊服に着替えた。
【どこに行くんだ?】
「さっ、斎藤隊長!」
【出かけるなら付き合おう】
斎藤の申し出に、遼は一瞬躊躇う。
斎藤も愛染香をかいでいた筈だ。
土方や沖田のように理性を失っているわけではないように見えるが、隠しているだけかもしれない。
「遼!」
悩んでいると、背後から名前を呼ばれた。
振り向かずとも、誰かわかった遼は、咄嗟に斎藤の手を取って走り出す。
「すみません斎藤隊長、付き合って下さい!」
【わかった】
「ありがとうございます。とりあえず急ぎましょう」
何故か顔を赤らめている斎藤を引っ張って、吉原へと急ぐ。
屯所を出ると、大通りでタクシーを拾い、吉原の入口で降りると、遼は百華を探して通りを歩いた。
「あっ、月詠さん!」
「ああ、遼か。男連れでこんな所に来るとは……ワケありか?
吉原はまだその手の店は少ないんだが……」
「月詠さん、何かもの凄い勘違いしてません?」
「その男と、その……密会する店を探しているのではないのか?」
「この人は、三番隊隊長で私の上司です。事情が有って同行して頂いているんです」
やはり誤解されていたと頭を抱えていると、ポンと肩を叩かれる。
【愛染香の事を聞かないと】
「え、あ、そうですね。あの、月詠さん、愛染香について教えてくれませんか?」
「愛染香?!」
妙に驚く月詠に、二人は首を傾げた。