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魂の色【銀魂短編夢】

第24章 ハッピーメリークリスマス【神楽友情夢】


どれほどの時間をそうしていたのか、座った姿勢のまますっかり体が固まってしまい、溜息をつく。

「わんっ!!」

突然聞こえた鳴き声に、神楽は慌てて顔を上げた。

「定春…?」
「あ、こんな所にいた」

遊具の影からぴょこんと顔を出したのは、神楽が今最も顔を合わせづらい人物で、咄嗟に逃げ出そうとする。

「あっ、待って!」

がっちりと掴まれた手首を振りほどくことが出来ず、神楽は泣き出しそうになりながら俯いた。
角がつぶれた状態で置かれているケーキの箱に気付いた遼は、神楽から手を離してそれを持ち上げて中身を確認する。

「潰れちゃってるね。ねぇ、神楽ちゃん」
「ごめんアル。私が投げたから……でも、新しいケーキを買うお金もなくて…せっかく遼とクリスマスパーティするって言ってたのに」

ぽたりと零れたしずくが渇いた地面を濡らすのを見て、遼は少し大きく溜息をついた。

「あーあ、酷いなぁ神楽ちゃん」
「っ!」
「こんな事で、私が怒ると思ったの?」
「え?」

遼は神楽と目を合わせて微笑むと、緊張して握り込んでいる神楽の手を取って「帰ろうか」と促す。

「で、でも、ケーキが…」
「わざと潰したわけじゃないでしょ。大丈夫大丈夫、味は変わらな――ううん、もっと美味しくしてみせるから」

何かを思いついた遼は、一人満足そうに頷くと、神楽の手をぎゅっと握った。

「そうと決まれば、急いで帰らなくちゃ。ほら、神楽ちゃん、定春くん」
「えっ、あ、遼…」
「わんっ!!」

小走りで駆けだした遼と神楽に、定春も慌てて後を追いかける。にこにこと満足そうな遼と対照的に、神楽は不安げに眉を顰めていて、定春が僅かに心配そうにその表情を覗き込んだ。
間もなく万事屋という所で、きょろきょろと辺りを見回す銀時と新八に遭遇し、遼は大きく手を振って二人を呼び止める。

「銀ちゃーん、新八くーん!」
「おお、神楽見つかったんだな」
「うん。ねえ、銀ちゃんにお願いがあるんだけど…ちょっと耳貸して」

神楽の手を離した遼は、ちょいちょいと銀時を呼び寄せて耳打ちした。

「――で、だから、――を、……」
「おー、わかった。じゃあ行ってくらぁ。新八、ちょっと手伝え」
「え、はい」
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