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魂の色【銀魂短編夢】

第24章 ハッピーメリークリスマス【神楽友情夢】


「お前今、何て言ったアルか?」

怒気の籠った神楽の声に、沖田の口の端が上がり、人の悪い笑みを浮かべる。

「遼が作ったケーキを一緒に食ったんだよ」

厳密には、「遼が自分で食べるために作ったホットケーキを横取りして食べた」のだが、神楽を苛立たせるために、沖田はわざと理由を省いて伝えた。

「オイ、しゃば憎。一発お見舞いしてやるからそこになおるネ」
「へぇ、やる気か?」

刀を構えた沖田に、神楽も咄嗟に戦闘態勢に入る。
”それ”に気付いた定春が、慌てて悲鳴に近い泣き声を上げた。

「あおんっ!!」
「ん、どうしたアル?」
「クソチャイナ、ケーキが吹っ飛んでいったぜ」
「え……あああああああああああ!!!!!!」

神楽が放り投げたケーキの箱は、数メートル先で無残にも地面に打ち付けられていた。
慌てて駆け寄った神楽は、箱の中をちらりと覗いて言葉を失う。

「あーあ、ぐちゃぐちゃだな」
「くぅん……」
「ま、自分で放り投げたんだから自業自得だろ」

冷たく告げた沖田は、これ以上は相手にならないとあっさりこの場を去っていった。
残された神楽は茫然とケーキの箱を見つめ、寄り添う定春は悲し気に鼻を鳴らす。その姿を見つけた新八は、走り寄り声を掛けた。

「神楽ちゃん、こんな所でどうしたの?」
「なっ、何でもないアル!」
「でも…あれ、もしかしてソレ――」

つぶれた箱を指さされ、神楽はそれを抱えて慌てて新八の前から走り去る。
新八が呼び止める声が聞こえていたが、一刻も早くこの場から逃げ出したくて、無我夢中で走って行った。
失敗を咎められることが怖かったのもあるが、それ以上に期待を裏切ってしまったような気がして、悲しくて辛くてどうしようもなかったのだ。

(どうにかしないと、でも、こんなんじゃ――)

手持ちのお金では、新しいケーキを用意するには全然足らない。けれど、どうすればいいのかわからなかった。だからただ走って、たどり着いたのは近所の公園で、隠れるように遊具の中に入って膝を抱える。
醜く潰れたケーキの箱に、つんと鼻の奥が痛くなり、涙が溢れた。
怒りに任せて我を失ってしまう自分が大嫌いなのに、そんな自分から抜け出すことができない。

「遼きっと、呆れるアル……」

遼の悲しむ顔が浮かんで、ますます自己嫌悪に陥った。
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