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魂の色【銀魂短編夢】

第23章 合歓綢繆【阿伏兎裏夢】


阿伏兎の部屋に、緑茶の香りが広がる。

「うん、やっぱりおいしい」
「お前さんも好きだな」
「こだわり始めると、意外と奥が深いのよ」

にこりと笑った遼は、茶菓子にと用意したチョコレートを口に含んだ。

「何でもうまそうに喰うなァ」
「美味しいもの。それよりも阿伏兎、今日は本当に疲れた顔をしているわね」
「まあ、俺も年だからな」
「随分と殊勝なことを言うようになったわね。じゃあ今日は、たっぷり癒してあげる。ほら、ベッドに横になって」

腕を引かれ、阿伏兎はやれやれと溜息をつくと言われるがまま寝転がる。

「仰向けじゃなくてうつ伏せで寝て。あ、上着は脱いでいいから」
「はいはい、仰せの通りに」
「よろしい。じゃあ、始めるわね」

腕まくりをした遼は、上半身裸で寝転ぶ阿伏兎に跨って膝立ちになると、少し強めに肩のあたりを押さえた。

「痛くない?」
「もうちょっと強くてもいい」
「すごいわね。ガチガチに固まってて、指が全然入っていかないんだけど…やっぱり定期的に揉まないと駄目ね」

遼がかなり体重をかけても、全く揉めている実感がない。やけになってぎゅうぎゅうと押してみるが、ほとんど反応がなく、遼は大きく溜息をついて阿伏兎の腰の上に座った。

「重い?」
「いんや、丁度いい。そのまま乗ってていいぞ」
「こんなのでいいの?」
「ああ。どうせならそのまま凭れてくれ」

遼は口を尖らせながらも、言われるがままに阿伏兎の背中にうつ伏せる。

「何か、親子亀みたい……」
「ははっ、そりゃあいい」
「良くないわよ。もうっ」

阿伏兎の広い背中に頬を寄せ、遼は目を閉じた。規則的な心音に、安心すると同時に胸が苦しくなった。
こうして触れ合うだけで、遼はどうしようもない程に欲情しているというのに、阿伏兎は全くそんな気配がない。自分ばかりがどんどん惹かれていっていて、少しだけ悔しかった。

「阿伏兎……好き」

聞こえるかわからないほど小さな声で呟くと、阿伏兎がくつくつと喉を鳴らして笑う。

「随分可愛い事言ってくれるじゃねぇか」
「聞こえたの?」
「ああ。で、次はどうしてくれるんだ」

誘うような阿伏兎の声に、遼は少し悩むとぎゅっと体を押し付けた。
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