第23章 合歓綢繆【阿伏兎裏夢】
数日後、件のエイリアン退治を終えた元第七師団一行は、とある星に滞在していた。
艦内に神威の姿がないことに気付いた阿伏兎は、操縦室を訪れてモニターに向かう遼に声をかける。
「あれ、団長は?」
「団長なら、珍しい食べ物があるとかで外食に。てっきり副団長がご一緒かと思っていました」
「いんや。まあ、団長は放っておいていいだろ。…ふあぁぁっ」
大きな欠伸をした阿伏兎に遼は「お疲れですね」とくすりと笑う。
「お前さんだって働きづめだろ。団長が居ない時くらい休んだらどうだ?」
「そうですね。では、後ほど部屋にお伺いしますのでお湯を用意しておいて頂けますか」
「どっちのだ?」
「ふふっ。どちらも、です」
意味深な遼の微笑みに、阿伏兎は「後でな」と手を振りながら操縦室を出て行った。その背中を見送った遼は、軽くストレッチをすると近くの団員に後を任せて自室に戻る。
「今日は何にしようかな。ミント系か、それとも……そうだ、この間地球に寄った時に買った緑茶があったんだ」
茶筒を開けて香りを確認すると、遼は一つ頷いて用意を始めた。
神威やほかの団員にお茶を振舞うことはしばしばあるが、阿伏兎に用意するのはいつも特別なものだ。味や香り、効果、効能…いつもどこか疲れた様子の阿伏兎を癒せればと思う内に、どんどん知識がついてすっかり部屋の棚が関連するもので埋め尽くされている。
「我ながら、ここまで嵌るなんて大したものね」
全ては阿伏兎の為だと言うのも、何とも言えない話だ。
恋に溺れる日が来るなんて、思ってもいなかった。
お盆に乗せた茶器を片手に部屋を出ると、軽い足取りで阿伏兎の部屋に向かう。