第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
「所で遼ちゃん、今夜はどうするんだ?」
「自宅に戻りますけど」
唯一の女性隊士という理由で屯所内に自室の無い遼は、近くに部屋を借りている。
基本的にはそこから通勤している状態だ。
「一人で帰るのはマズいんじゃないかな?」
「え?」
「今の調子だと、君の部屋まで押しかけて行くぞ。押しかけるだけならいいが……」
言い淀む近藤に、遼の顔がみるみる青ざめる。
愛染香に狂った彼らが押しかけてきたら、その先は一つしかない。
話を聞いていた原田が「どこかに避難した方がいいかもな」と提案した。
「そうですね。じゃあ、お妙ちゃんの……」
「残念だが、お妙さんはスナックすまいるの慰安旅行で江戸にいない」
「だったら万事屋に……」
「万事屋だったら、さっき夜の警備の依頼とかで出掛けてたぞ。まぁ、チャイナさんは留守番らしいがな」
神楽はボディーガードとして非常に優秀だが、夜も遅いし、何よりこんな事に巻き込めない。
「ふっ、ふふっ、私いっその事、あの人達と4Pとかしちゃったらいいんですかね」
「ちょっ、遼ちゃん落ち着いて!」
とんでもない思考に陥った遼を、近藤は慌てて止めるが、遼の目は完全に絶望している。
見かねた原田が助け船を出した。
「今日は屯所に泊まれば良いんじゃないか。常に誰かの気配はあるし、あの人達もそうそう無茶はしないだろ」
「そうだな。部屋はどうするか……」
「局長室なら、流石に副長も口は出せないでしょう。局長が傍に居れば、沖田さんも無茶はしないでしょうし」
「それしかないか。遼ちゃん、それでいいか?」
「おっ、お願いします!」
必死の形相で縋りつく遼に、近藤は若干引きながらも「とりあえず部屋に行こうか」と促す。
近藤の部屋に到着すると、暫くして隊士達が予備の布団を運び込んできた。
遼はそれを受け取ると、近藤の布団と並べて敷き、その上に倒れ込む。
「ああ、疲れた……」
「見張りの隊士を置いておくから、ゆっくり休んでてくれ。俺は風呂に行ってくるから」
「行ってらっしゃい」
近藤を見送ると、布団の上でごろごろと転がる。
「明日の朝には消えてるかな。消えてるといいな」
横になったせいか、眠気に襲われて瞼が閉じていった。
「ん……何か、あったかい」